今や、海外にいる日本の小・中学生は7万人近くいるといわれています。さらに、乳幼児を入れると相当数の日本の子どもが海外で生活しています。
ちなみに、アジア諸国に赴任の場合は、約60%の小中学生が、日本人学校に通っていて、欧米諸国では日本人学校に通っているのは20%以下です。その他の子どもたちは、現地校やインターナショナルスクールに通っています。
英語圏もしくは、ヨーロッパに滞在した場合は、現地校や現地のインターナショナルスクールに通わせるケースが多いです。これは、その国の言語を習得させたいかどうかという親の影響といえます。
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短期から5年までの中期滞在の場合は、日本人学校に入学するケースが多い
子どものために、どの学校に入れるかは、家族の考え方や、海外赴任であれば滞在年数によって各家庭の状況などで選択されます。学校は大きく「日本人学校(補習校)」「インターナショナルスクール」「現地校」の3つに分けられます。
もし海外駐在員で1年から5年ほど海外で生活をするのと、10年以上も海外で生活するのとでは、子どもの学校選択が変わってくると思います。基本的には海外駐在員として、数年で日本に帰ってくることを念頭に置いて、学校を選択する必要があります。
永住するならともかく(永住するとなると今度は日本語教育の重要性が課題になってきます)、英語が話せるようになるからというイメージだけで、現地校やインターナショナルスクールに入れてしまうと、後々子どもが困ってしまいます。
なぜなら、数年だけ英語圏で生活するとなると、生活をするレベル(聞く・話す)の言語は身についても、学習するための言語(読解力)までは、身についていないというケースがあり、日本に帰ってくると、逆に日本で受けるべき教育の部分が抜けているので日本での学習に困難が生じてしまうのです。
短期から中期滞在予定だが、現地校やインターナショナルスクールに通わせる場合
それでも、数年間だけの海外駐在員の子どもが海外で現地校やインターナショナルスクールに入学するのなら、事前の準備と事後の英語力を維持するための努力が必要になります。
もちろん、現地で英語の授業についていくための努力は必須です。
しかし、それよりも、事前事後の英語学習の準備や継続の努力が大切だとわたしは思っています。これは、子どもの努力というよりは、親の努力だと思います。
子どもが留学して早々や、移住してまだ日がたっていないとき、親としてとにかく心配なのが、「子どもが学校になじめるかどうか」ということです。
幼稚園や小学校低学年の時に海外に住み始めるならともかく、小学校高学年以上になってくると、いろいろな壁を感じてしまい、親子ともども悩んでしまいます。
また、短期で日本人学校に通うのであれば問題はないのかもしれませんが、長期的に滞在するとか、近くに日本人学校がなく現地の学校に転入学するということがあれば、なおさら大変さを感じるかもしれません。
実際に、わたしの知人の勤める会社では、子どもが現地になじめなかったため、海外出張を断念、もしくは旦那さんの海外単身赴任に切り替えたという家族が何組もいると聞いています。
子どもにとっては「現地になじめる」かどうかということが海外で生活し続けるために最も重要なことです。
現地になじむことで最も注目したいのが、「学校になじめる」かどうかということです。子どもにとって学校になじめないと、すべてが苦しくなってしまいます。今回は、特に現地校やインターナショナルスクールに通う子どもを中心に、一日も早く学校になじめるようにするためには、どのような手助けが必要なのか考えてみたいと思います。
「学校になじめない」とは
ここでいう「学校になじめない」とはどういうことかというと、人によって違いはあるものの「文化の違い:日本の教育で慣れてきたため、その違いにカルチャーショックを受ける」「感覚の違い:見た目が日本人とは違う」「言語の違い:何を話しているのかわからない」などといった、これまで自分が体験してきた様々なことに対して「違いがある」「全く新しい経験である」「理解するのに時間がかかる」「受け入れるのに時間が必要である」などといったことで、生活に支障が出てしまうということを言います。
こういったいろいろなものを現地の生活に合わせていく必要がありますが、なんと言っても、「言語」はその中でも重要度が高く、言語ができるようになれば、いち早くなじめるようになります。
実際に、わたしの勤めていたカナダの小学校では、4年生の2学期より日本人から移民してきた男の子がいましたが、初めはすべてのものが目新しく不安を覚え、学校で涙ぐんでいる姿を見ました。
カナダの公立小学校は日本と同じで、学校では一斉授業で勉強をする機会が多くあります。そして、大半のクラスは、30人ぐらいの子どもたちを一人の先生がみています。
ここで想像してみてください。4年生ともなると、大人が話すような難しい単語は使わないものの、日本人でももう立派に話し合いができる日本語力を持っています。
彼はそこに一人で飛び込んできたので、相当なプレッシャーがあったと思います。
授業は、一人の先生が前でペラペラと英語で話し、子どもたちも同じように、ペラペラと英語で返す…。もちろんこの日本人の男の子には、英語の補習授業が用意されていますが、とても一週間に数時間では、英語の習得ができません。担任の先生に質問しようにも、できない状態がしばらく続いたと思います。そんな彼を少しの間サポートさせていただきました。
しかし、少しずつわたしの手から離れ、自分で挑戦したいという気持ちが芽生え、授業でも積極的に質問できるようになっていく姿が、とても頼もしく思えました。
彼もまた、ESL(English as a second language)での英語の補助授業を受け、カナダの生活にも慣れ、少しずつ自信をつけていったのだと思います。
そんな中、彼のお家での様子をご両親に聞くと、家でも英語の本を少しずつ読む習慣づけをするようになったということでした。生活に慣れようとすると同時に、自分でもはやく英語を身につけられるように努力していた、その姿に感銘を受けました。
あれから15年以上がたちますが、海外移住も視野に入れている我が家は、もし、あの日本人の男の子のように、ガラリと環境が変わって、海外生活となった場合、特に「言語」の問題をどのように克服できるだろうか…と考えることがあります。
「もし今、海外生活がはじまったら、子どもが困らないようにするためにどのようなことができるだろうか?」
その当時は、無料インターネットテレビ電話はかろうじてありましたが、回線状態が悪く、途中で音声や画像が途切れていました。
しかし、今ではインターネット環境が当たり前になり、インターネットを生かしたオンライン無料テレビ電話も充実しています。もし両親ともども日本人で、英語圏に海外移住して、自分の子どもにいち早く英語力をアップさせられるために何をしてあげられるかと考えると、英語で楽しめる動画を見せたり、オンラインで英会話を受けさせたりしたいと思います。
なぜなら、安い料金でESLの機会を増やしてあげられるからです。
まずはざっくりとした目標を立てよう
日本のオンライン英会話教室に海外からも申し込みが簡単にできます。そして、オンライン英会話は、人によって英語を学ぶ目的が違うため、その目的にあったレッスンを自分たちでマネージメントできます。
例えば、マネージメントをする際、おすすめなのが、「目標を立てる」ということです。
今回は、子どもが早く海外で学校生活になじめるようにするため、海外行く前に、もしくは現地でどのような目標を立てたらよいのでしょうか?
目標は子ども一緒に考えるのがいいと思いますが、ただでさえ初めての地にきて、初めてのことだらけを経験している状態でしたら、「こうしなければならない!」と根を詰めるのではなく、ゆったりとした気持ちで何気なく「どうしたいか」ということを一緒に話をしてもいいと思います。
考え方としては、
- ゆったり目標
- 身近な目標
を立てるということです。
- ゆったり目標とは
これは、数年かけて達成する、ゆったりとした目標になります。英語を使いこなせることで、どのようにしたいか(してほしいか)ということです。小学校高学年ぐらいの子であれば、こういった話し合いもできるかもしれません。
「英語でたくさんお話ができるようになるといいな」
「日本語と英語を両方使えるようになるといいな」
「英語の本もたくさん読めるようになるといいな」
「友達とサマーキャンプにでかけたいな」など、「こうなりたいな」「こういうことができるといいな」という目標です。
- 身近な目標とは
これは、ゆったり目標を達成するためには日々どのようなことをしていったら、それができるようになるかな?というものです。
「まずは数が数えるようになりたいな」
「どうぶつ園の動物を英語で書けるようになるといいな」
「ショッピングセンターに行くためにバスの乗り方をきけるようになりたいな」
「お友達と簡単なお話ができるようになるといいな」など、これは日本にいても同じように「やれるといいな」「やってみたいな」という小さな目標の積み重ねだと思います。
そして、もしその小さな目標が達成できた時は手放しで喜んで、褒めてあげてください。
一番勘違いされることは、海外いるからといって英語が話せるようになるのが当たり前ではありません。
子どもの場合は、親の事情で海外で生活をするケースが大半なので、あくまでも子どもの意思を最大限に尊重する必要があります。
学びやすさ=なじみやすさ
今では、わたしが海外生活をしていたころには考えられなかった、技術が発達し、サービスも充実しています。海外にいてもいなくても、海外にいるさながらの体験ができるので、本当に現代の子どもたちがうらやましいと思いました。
そして、海外にいたとしても逆に自分たちが学びやすい方法を選択できるのです。
冒頭にもお伝えしたように、「学校でなじめない」とは、「文化の違い:日本の教育で慣れてきたため、その違いにカルチャーショックを受ける」「感覚の違い:見た目が日本人とは違う」「言語の違い:何を話しているのかわからない」というものでした。その中でも「言語の違い」は現地の学校や生活になじむのに最も重要な課題です。
わたしがカナダにいたとき、日本人のわたしは正直、アジア人の友達が多くいました。マレーシア、フィリピン、韓国、台湾、中国といった人たちでした。なんとなくですが、文化が似通っているためか、話が分かりあったり、食文化が合ったりしていました。そういう細やかなところに安心感が持てたのだと思います。ホームステイをやめて、貸し部屋に住んでいたときもフィリピン人夫婦の家の部屋を借りていました。
オンライン英会話はフィリピンの講師が多くいます。メリットは、なじみやすく文化の似通った講師と話ができる、ということと、低コストであるということです。
海外で生活をするのは誰でも最初は不安があります。中でも、子どもたちは大人よりも、その国の社会的・文化的影響を多く受けます。
また、日本の文化や社会をしっかりと学び、日本人であるということに誇りを持つことも大切だと思います。そのために、自分の国、文化や社会などについて英語で説明できるような練習をしておくこともおすすめです。
「言語の違い」に対する不安や恐怖を一日も早く取り除いてあげたいし、親自身も自分たちの言語に対する不安や恐怖を取り除きたいと思うものです。しかし、本当に幸運なことに、現代の世界はインターネットの普及があり、昔よりもよりなじみやすい環境を整えてあげることができ、英語がより学びやすくなりました。そういったものをフルに活用することで、そういった不安や恐怖を早く取り除くことができるのだと思います。
子どもたちが、そして家族全員が一日でも早く現地の生活になじめるようになることを応援しています。
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