「赤ちゃんのころにたくさん話しかけるといいよ。賢い子になるよ。」という話を聞いたことはありませんか?
これは、他の子よりも早く、文字が書ける、計算ができる、といったただ知識だけが豊富な子どもを意味しているのではありません。「賢い子」というのは、いろいろな意味があると思いますが、基本的には自分で考え、判断ができ、問題解決ができる子のことを言うのだと思います。この能力は、脳の前方にある「前頭前野」というところが関係しています。
前頭前野をフルに働かせるためには、幼少のころより、たくさん話しかけたり、歌ったり、見せたり、聞かせたりといった様々な刺激によって発達していきます。
そして、この時期は言語習得に大切な時期でもあります。言語というのは、耳から入った情報を脳で処理して、その後、声を発するという発話(話すこと)につながります。その一連の流れがスムーズにできることで言語を話せるのです。
そしてその機能を十分に生かすためには、なによりもまず一番大切なのが「耳」です。
実は、生まれてすぐの赤ちゃんの耳が一番、「互換性」のある耳なのです。つまり、いろいろな音を大人よりも、小学生よりも、「聞き取る」ことができるのです。
この、耳が一番柔軟に働く時期に、どんどんいい情報を伝えるということが重要なのです。
そしてこの時期に、英語の情報をたくさん入れることによって、子どもは英語を聴きとる本来の能力を最大に生かすことができるのです。
子どもは自然と英語を習得できるとはどういうことか
赤ちゃんは耳が良く、言語を習得するのにとても優れているという話を聞いたことがあると思います。一方で、日本人は英語を聴き取ることができないという話を聞いたこともあると思います。
実は、これには「周波数」の聴き取りが大きく関係しています。
赤ちゃんの耳は、たくさんの音を聴き取ることができます。音は、まず音が発せられたところから振動となって空気中を伝わってきます。これを「周波数」と言い表しますが、この周波数は1秒間にどれだけ振動するかを表すもので、これが音として耳に伝わります。その振動数は、聴覚神経を通って脳に入り、音を聴き分けられるのです。
例えば、1秒間に100回振動したら、それは100Hz(ヘルツ)と表します。
日本人が英語をうまく聞き取れないかというと、日本語の周波数は125Hz~1500Hzに対して、英語の周波数は2000Hz~12000Hzであるため、日本人の耳では英語を聴き取ることができないのです。
しかし実は、生まれてすぐの赤ちゃんは16Hz~16000Hzととても広い音を聴き分けられます。つまり16Hz~16000Hzという空気中を振動して伝わってくる音を聴き取る能力が豊富だということです。
耳と脳の関係を明かす
これは各言語の周波数の範囲(パスバンド)です。
人間の赤ちゃんは生まれたときには、16Hz~16000Hzの周波数の音を聴き分けることができます。この表からわかるように、もし私たちが赤ちゃんに帰れるとしたら、いとも簡単に英語を聴き取ることができるということがわかります。
では、なぜ赤ちゃんのころには英語を聞き取ることができるのに、大人になると英語を聴き取れる能力がなくなってしまうのでしょうか?
それは、この周波数の範囲が徐々に狭くなっていくからです。つまり、赤ちゃんのころはとても広い範囲の音を聞き分けることができるのですが、成長するにつれて聞かない周波数の音は聞き取る必要がないと脳が判断し、やがてその能力を失い、赤ちゃんが生まれた環境で使われない音は聴き取れなくなっていくのです。
日本で生まれ育ったわたしたちの環境に英語の音がないので、本来持っている英語の音を聞き分ける能力はいつしか自然と消え去ってしまうのです。
しかし、子どもに情報を与え続けることで、つまり有益な情報を耳から入れ続けることで、人間が本来持っている能力を保ち続けることができます。
耳と脳の関係
英語の音を聞き分ける能力がなくなってしまう前にできることは、どのようなことがあるのでしょうか?
それには、まずは耳と脳の関係を知る必要があります。
赤ちゃんが一番初めに行う情報収集の方法は、耳からです。耳は人間が成長していくのにとても大切な働きをします。
〈耳の構造〉
構造と働き | |
鼓膜 | 音のレンズで音をとらえる |
中耳 | 音の調整
鼓膜張筋とアブミ骨筋が調整し合って耳小骨を動かし、どの周波数かを聴き取る |
内耳 | 周波数ごとに音を分析し、脳に音の情報を「電気信号」に変えて送る |
〈鼓膜張筋とアブミ骨筋〉
耳は空気中を伝わる音の振動をキャッチします。その音の振動は、電気刺激として脳に伝達、知覚されます。それがもう一度耳に戻ることで、それがどんな音なのかが理解され、次の言葉を発する(話す)という流れにつながります。
このようにして、耳のそれぞれの部分が働いて、連動し合って、体の中に音を取り込むということが「聴く」ということです。
自然な流れで自然に英語を習得しよう
先ほどもお話ししたように、幼少期の耳は、あらゆる周波数の聴き取りに柔軟です。
この時期にどのような働きかけをしたら、「英語を習得する」ことにつながるのでしょうか?
生まれたての赤ちゃんは16Hz~16000Hzの周波数の音を聞き分ける能力をもって生まれてきます。
しかし、この能力は、例えば日本語しか使わない環境だったら、日本語の125Hz~1500Hz以外の音を聴き分ける能力は消えてしまいます。せっかく持っている16Hz~16000HZの聴き分け能力は、日常で使われる部分しか必要ないと感じ、残らないのです。
だからと言って何か特別なことをしなくてはならないのではなく、毎日子どもにたくさんの音を聞かせるということが大切です。耳の機能が柔軟なうちに、いろいろな音を聞かせるということです。
実は、一見関係ないと思われる「絶対音感(「ド」を鳴らしたとき「ド」と瞬時に判断できる能力)」もこの時期に身につきます。
重要なのは親が赤ちゃんにたくさん話しかけたり、親と子どもがたくさん話をしたりするということです。
わたしたちは、本来生まれ持っている聞き分ける力を、いかに保つかということが大切になってくるのです。そのためには、幼少のころからの働きかけが大切です。
ではどうしたら良いかというと、英語ができる人が子どもに直接話しかけるのが最も効果的です。しかし、そのような環境に恵まれている人は、なかなかいないでしょう。
そこで、だれもが簡単にできるのが、CDやDVDをかけ流しするという方法です。
さらに効果的にするために、ただ、かけ流しをするのではなくて、親も一緒にCDを聴いて、DVDを見て、歌ったり発音したりすると良いでしょう。そうすることで親も一緒に勉強することができます。その親が楽しんで学んでいる姿を見せると、子どもに英語の楽しさが伝わります。単にかけ流しをするよりも、効果が高まります。
また、英語の絵本の読み聞かせも効果があります。読み聞かせは英語の周波数になれるだけではないメリットがあります。例えば、情緒を育てたり、疑似体験したりできる魅力があります。
耳は、人間が成長するのにとても大切な器官です。子どもの可能性は無限大です。英語でどんどん耳に働きかけて、英語を聴き取れる耳を育てましょう。そして、思った時が始め時です。もう園児だから…とか、小学生だから…と考えずに、子どもの可能性を信じて「耳」にどんどん働きかけていきましょう!
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