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子どものための英語敬語~英語にも敬語はある~

「英語って敬語がないから誰に対しても同じ言葉遣いでいいよね。英語って楽だね。」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。でもそれは間違いです。確かに英語は日本語のように、一つのものに対して言い方が少なく、シンプルです。

しかし、英語だったら何でも誰にでも同じ表現で言っていいのかというと、そういうわけでもありません。

目上の人に対する敬語や、何かをお願いするときの表現方法、丁寧な断り方などがあります。そのTPOに合わせた表現方法が英語にもあります。

確かに、日本語の尊敬語、謙譲語、丁寧語とたくさんの使い分けなければならない言葉があります。しかし、英語にも日本語のような細やかな使い分けはないにしてもきちんとした「敬語」があります。そして子どもも大人も、きちんとした場面で「敬語」を使うことは大切なのです。

 どのような敬語があるのか

ビジネスや国際的や会議などでの場では、ハリウッド映画に出てくるような、スラングやため口は使われません。ですので、英語で覚えたフレーズをそのまま使うのは危険です。日本語にも目上の人に話しかけるときは、ため口で話しかけることや、丁寧さに欠ける言葉づかいで話しかけることはないと思います。いくらシンプルな表現が多い英語でも、やはりきちんとしなくてはいけないところは日本語と同じです。

そこでまずは、日本語でいうところの「○○さん」「○○先生」「○○教授」といった、失礼にならない名前の呼び方を知りましょう。

英語で名前を読んでみよう!

日本人は苗字(last name:ラストネーム)で呼ぶことが多いです。そして、英語圏の人は、名前(first name:ファーストネーム)で呼ぶことが多いのは事実です。

例えば、

Sakiko, this is Mike.

Hi! It’s nice to see you, Mike.

というように、友達同士とか、親しい人を紹介したいときとか、苗字(last name)で紹介することはまずありません。ところが、学校の先生(先生がマイク・ブラウンさんという姓名だった場合)を「Mike! Could you help me? (マイク!ちょっとお願いしたいことがあるのですが)」とは言いません。きちんと苗字である「Brown」に「Mr.」と付けて「Mr.Brown」と呼びます。

そして、その他にも、教授だったり、医者だったり、敬称を付けるべき人にきちんと敬称を付けないでいると、相手を不快な思いにさせてしまうことがあります。

よっぽど子ども同士の間では大丈夫ですが、もし子どもが目上の人に話しかけるときや、学校の研修などで質問をしたいときには、相手に対して敬称をきちんとつけて話すことが大切だということを伝えたいものです。

子どもに必要な最低限の敬語

先ほどの敬称を使うということも大切ですが、子どもにとってその他に必要な敬語にはどのようなものがあるのでしょうか?英語の敬語にはたくさんの種類があるということがわかったと思いますが、ここでは子どものために必要な敬語をいくつかご紹介します。

あいさつの敬語

ここでは子どもが初めての訪問先などで「はじめまして」「(家族など)を紹介します」などの場面でどのように表現したらいいのか、それぞれよく使われる表現をいくつか取り上げたいと思います。

・(It’s) nice to see you.(はじめまして。)

・(It’s) nice to meet you.(はじめまして。)

・(I’m) pleased to meet you.(お会いできて光栄です。)

・(I’m) glad to meet you.(お会いできてうれしいです。)

よく知られている「How do you do?」は、子どもには堅苦しすぎます。しかし、正式な場でよく使われる表現ではあります。

また、日本の学校教育では「Nice to meet you.」という一つの表現しか習わないかもしれませんが、「It’s」を付けたり、「pleased(嬉しい。光栄です。)」を使ったりして、同じ「はじめまして」でも、いろいろな表現を身に付けましょう。

続いて「(家族など)を紹介します」という場面です。

・Let me introduce my family.(私の家族を紹介します。)

・Let me introduce myself. (わたしについて紹介させてください。)

・Let me introduce my sister Naomi.(妹の直美を紹介します。)

Let me は動詞を続けることで「~します。」とか「わたしに~させてください。」という意味になります。

お願いするときの敬語

人に何かをお願いするときの表現方法を覚えておくと、人にスムーズにお願い事ができて便利です。これは、「お願いがあるのですが…」という時に使えます。目上、年下にかかわらず、丁寧な方がよりいい印象をもたれます。親しい間柄こそ覚えたい表現ですね。

・Would you(please)do me a favor?(お願いがあるのですが。)

・Could you (please) do me a favor?(お願いがあるのですが。)

・Can you do me a small favor?(ちょっとお願いしてもいい?)

・May I ask a favor?(お願いがあるのですが。)

などがあります。you の後にpleaseをつけると、より丁寧になります。

謝るときの敬語

「親しき中にも礼儀あり」という言葉は、何も日本人のためだけにあるものではありません。「Sorry!」だけでもいいのですが、もう一歩前進して、子どもにとって使いやすくより丁寧な表現をお伝えしいます。

・I’m sorry to be late.(遅れてごめんなさい。)

・I’m very sorry.(ほんとうにすみません。)

・I’m apologize for missing the party.(パーティーに行けなくてごめんなさい。)

これらのあいさつに関する表現は、なにも子どもだけのためのものではありません。ちょっとした表現を身に付けておくことで、コミュニケーションがとてもスムーズに進みます。

ぜひ、親子で一緒に覚えてください。

「Thank you!」は一番の敬語です!

いろいろな英語の敬語を紹介して来ましたが、最後に何といっても一番の敬語をお伝えします。それは「Thank you」です。

日本人は「礼儀正しい」とよく外国人からも言われます。それはお辞儀の仕方のうやうやしさや、物を手渡しするときの優雅さなどの態度や振る舞いに対してのようです。一方、日本人がビジネスの場で日本人は「ありがとう」などの感謝の言葉をあまり使わないといわれることもあります。

日本だと、丁寧にお辞儀をしたり、両手で受け渡ししたりといった態度で敬意を表すことがあり、言葉を使わなくとも、その敬意を伝えることができます。しかし、英語の世界では、きちんと言葉で敬意を伝える必要があります。言葉で言うことで相手に自分の気持ちをきちんと伝えられます。逆に、言わないと「なかったもの」として受け止められがちです。

日本人のように、敬意を態度で示すのではなく、きちんと言葉で表現していく必要があるのです。

そこで活躍するのが「Thank you」という一言です。また、「Thank you」のあとに、「for~」と付けることで、簡単に「単語」から「文章」へとレベルをアップさせられます。「Thank you」は、とても簡単で最大級の英語の敬語なのです。

何かをしてもらったとき、人に自分の話を聞いてもらったとき、飲食店で食事をしてお店を出るときなど、あらゆるところで「Thank you」は一番使える敬語です。これは、子どもも大人もいつでもどこでもだれもが簡単に使えます。

そして、Thank youをもう一歩進んだ言い回しにするためには、「for~」をあとに付けます。

例えば、

・Thank you for inviting me.(お招きいただきありがとうございます。)

・Thank you for your support.(助けてくださりありがとうございます。)

・Thank you for your corporation.(協力してくださってありがとうございます。)

・Thank you for your attention.(ご清聴ありがとうございました。)

などとたくさんの場面で使いまわすことができ、とても便利です。

今回「英語の敬語」について、いろいろな表現方法をお伝えしましたが、まずは難しいことは抜きにして「Thank you」とニッコリ、周りの人に伝えることから始めてみてはいかがでしょうか?

子どもと一緒にマザーグース&ナーサリーライムを楽しもう!

「きらきら光る、お空の星よ~ まばたきしては、みんなをみてる~ きらきら光る、お空の星よ~」

この歌を知らない人はいません。

これは「マザーグース(Mother Goose)」といって英語圏の「伝承童謡や詩」で、日本でいう「童謡・わらべうた」です。「マザーグース」はアメリカでの呼び方で、イギリスでは「ナーサリーライム(Nursery Rhymes)」といいます。しかし日本のわらべうたのように、すべてに音楽や曲がついているとは限らず、むしろ「詩」だけのものの方がたくさんあります。

このマザーグースやナーサリーライムは英語圏の子どもたちが最初に受ける言葉のレッスンです。

言葉そのもののレッスンでもありますが、心の形成に大きな影響を与えています。かのビートルズもこのマザーグースやナーサリーライムから詩を引用しています。また、映画にも影響を与えていて、たくさんの映画にマザーグースに出てくる言葉が引用されています。

日本人でマザーグースやナーサリーライムを知っている人は「日本のわらべうたのようなイギリスやアメリカの子どもの歌」「幼児英語教室で習った英語の歌」「怖くて残酷な歌」「ナンセンスな内容のもの」などなどいろんな意見が出てきます。

しかし、マザーグースやナーサリーライムは英語圏の子どもたちにとって日本人が考えるより密接なもので、切っても切り離すことができないものです。幼少のころから、親やおじいさん、おばあさん、学校の先生などに本で読んでもらったり、口ずさんだりして伝承されています。

国は違ったとしても、英語圏の人々にとって「共通言語」のようなものといっても過言ではありません。

そして、英語圏の人々のように、日本人のわたしたちにとっても、小さい子どもから高校生・社会人といった大人までの英語教材になります。

今回は、マザーグースやナーサリーライムの魅力とその紹介をしつつ、わたしたちがどのようにして英語学習に役立てたらいいのかということをお伝えしたいと思います。

マザーグース&ナーサリーライム

「マザーグース」とか「ナーサリーライム」といいますが、そもそも一体何なのでしょうか?いつからどこで始まったのでしょうか?そして、具体的な2つの違いは何なのでしょうか?

いくつかの疑問に答えていきたいと思います。

マザーグースやナーサリーライムは、子守唄、物語、早口言葉、かぞえうた、なぞなぞなど、様々な唄を含んだもので、その数はなんと1000編以上あるといわれています。

マザーグースは、英語の詩の原点であり、英語圏の人々の間に深く浸透している、子どもと大人の共通文化です。

すべての唄に「キラキラ星」のように「曲」や「音楽」がついているわけではありません。むしろもともとは「詩」のようなものから始まったようです。

その原点はというと、もともとフランスのシャルル・ペロー(1628-1703)の童話集がイギリスで翻訳されて出版されたとき、その副題が「Mother Goose’s Tales」と名付けられたことから始まり、広まっていきます。このイギリスで人気のあった童話集には「赤ずきん」や「シンデレラ」なども載っています。

その人気の童話集のタイトルを、イギリスの出版業者ジョン・ニューベリーが拝借して自分が編集した童謡集に「Mother Goose’s Melody」と名付けて後に出版しました。これ以降、伝承童謡集に「Mother Goose」という名前が付けられるようになりました。

そして、「マザーグース」と「ナーサリーライム」の違いですが、アメリカで「マザーグース」といわれているものも、イギリスではあまり理解されません。

アメリカでは、孫たちに童謡を歌って聞かせた、エリザベス・グースという実在の人物が、マザーグースのモデルとなっています。しかし、この人物はお墓も存在しないし、実在しなかったという説もありますが、今でも多くの人がこのエリザベス・グースが実在したという説を信じているようです。

一方、イギリスでは「ナーサリーライム」という言葉が一般的で「マザーグース」という言葉を知っている人は少ないようです。

「ナーサリーライム」という言葉は、「ナーサリー」は「子どもの部屋」、「ライム」は「韻を踏んだ詩」という意味があります。つまりイギリスでは、「幼児の押韻詩」として一般的に知られているのです。

ところで、日本には西洋の文化がアメリカ経由で入ってくるため、「マザーグース=伝承童謡」として理解され、あまり「ナーサリーライム」が伝承童謡とはされないのです。そして、日本の詩人・童謡作家の北原白秋も「まざあ・ぐうす」として伝承童謡を日本に広めています。

白秋はマザーグースを「不思議で、美しくて、おかしくて、ばかばかしくて、おもしろくて、なさけなくて、おこりたくて、わらいたくて、うたいたくなる」ものとして紹介しています。

 

ビートルズ、物語などにもつかわれているマザーグースやナーサリーライム

先ほど述べたように、実はビートルズもこのマザーグースやナーサリーライムから多くの歌詞を引用しています。

マザーグースやナーサリーライムは、英語圏の子どもだけでなく大人にとってなくてはならないものです。無意識のうちに体に染みつき、心を形成してきています。

日本人のわたしたちにとってもわらべうたのようなものは、子どものころから歌われているなじみのあるものです。

しかしマザーグースやナーサリーライムは、日本人がわらべ歌に親しむよりもより身近なものなのでしょう。なぜかというと、一般社会でも新聞にそのまま詩の引用が使われていたり、歌手や映画が作品に詩を引用している様子を見るとそれがわかります。

では、ここでいくつかマザーグースやナーサリーライムの中に出てくる詩と、それらを引用した作品を紹介したいと思います。

「The Star(Twinkle twinkle little star):キラキラ星」―ジェーン・ティラー、1806年頃

まずはなじみ深い「キラキラ星」です。わたしたちが良く耳にするキラキラ星は、とても短く簡単な訳ですが、実際のマザーグースやナーサリーライムのものは、とても長いです。しっかり訳すとこのようになります。

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「Humpty Dumpty:ハンプティー ダンプティー」

次は、マザーグースやナーサリーライムの中ではとても身近な詩です。これはなぞなぞ唄で、この詩を読み終わった後「これなーんだ?」と質問します。

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「ビートルズ」

実は、世界的人気のあるビートルズも、マザーグースやナーサリーライムの詩を引用しています。

ビートルズ

このビートルズの歌詞の中に使われたものが、以下の詩です。

ビートルズ抜き出し

「Tweedledum and Tweedledee:トゥイードゥルダムとトゥイ―ドゥルディー」

そして、かの有名なルイス・キャロルも、アリスの物語の中で詩をたくさん引用しています。引用されている「鏡の中のアリス」の第4章を見てみましょう。

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アリスのお話を知っている人は、「トゥイ―ドゥルダムとトゥイードゥルディー」はアリスのお話しに出てくる双子という印象が強いかもしれませんが、「アリス」の作者であるルイスキャロルが「ナーサリーライム」から引用したものです。他にも「ハンプティーダンプティー」や「ハートの女王」の詩なども引用しています。

アリスの作品だけでなくほかにも数えたらきりがないほど引用されています。例えば、映画はボブ・ウッドフォードの「オール・ザ・プレジデントメン」(1976年)、ポピュラー音楽ではアレサ・フランクリンの「オール・キングス・ホーシーズ」(1972年)、物語ではP.L.トラバースの「公園のメアリー・ポピンズ」(1952年)などといった詩を引用した作品は数知れません。いかにマザーグースやナーサリーライムが英国圏の人々の大人から子供まで、深く結びついていているかということがわかります。そして英語圏の人々にとって、聖書、シェイクスピアと同じようにマザーグースやナーサリーライムも人々の「根っこ」となっていて、独特の世界観や文化を創造する「基礎」となっているのです。

 

日本人にとっての活用法

英語圏の子どもたちは、幼いころから周りの大人や、学校などでマザーグースやナーサリーライムを耳にします。そのため、幼少のころより自然と英語の「音」や「リズム」に親しみ、「文章」「単語」「言い回し」「文法」「押韻」などに触れて育ちます。そこで、わたしたち日本人も是非このマザーグースやナーサリーライムを活用した英語学習をしましょう。

たいていどの本や絵本にもマザーグースやナーサリーライムの独特の世界観の挿絵が入っていて、親しみやすい英語教材になると思います。また、中にはリズムだけでなく音楽がついたものが収録されたCD付き絵本も売っています。

おすすめは親子で一緒に毎日、いろいろな詩に触れることです。

それでは、短い詩をもとに、日本では何年生で習う英語に相当するのかということを見ていきたいと思います。

「Pussy Cat, Pussy Cat:ねこちゃん、ねこちゃん」という短い詩の文を一行ずつみて、どのようなことが学べるのかを見ていきたいと思います。

まず初めに、ひとつひとつの単語の意味や読み方が学習できるということは言うまでもありません。

 

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細かい話をすると、単語そのものの習得にもなるし、単語の音であるフォニックスや文章のリズムも感じることができます。

この短い詩の中には、大きくとらえて次のような、英語の学習ができます。

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このような、英語習得に必要な様々な内容が、短い詩の中に盛り込まれおり、これを毎日繰り返し発音したり、歌ったりすることで自然と英語の文法や熟語などに親しむことができます。

また普段、日本語を話しているから気が付かないかもしれませんが、日本語のリズムは強弱が少なく一定のリズムだったり、文章に音節のようなものがなく流れるような感じで話したりしています。逆に、英語はリズムが良く、音にも強弱があります。

英語のような強弱のある表現豊かなリズムに、マザーグースやナーサリーライの詩を通して慣れておく必要があり、これがリスニング強化の手助けになります。また英語の「キレイな発音」を目指すことも必要かもしれませんが、リズムや強弱による「強勢(ストレス)」を学ぶことで、より通じやすい英語を習得することができるのです。

マザーグースやナーサリーライムは、「音」「リズム」「文章」「単語」「言い回し」「文法」「押韻」といった英語習得に必要な様々な条件を自然に身に付けさせてくれるのです。

英語圏の子どもたちのみならず、わたしたちもマザーグースやナーサリーライムを毎日聞きながら練習することで、自然と英語の言葉のレッスンと、英語圏の文化を体験する機会を両方同時に行えるのです。

しかし、正直このリズムとか、音の強弱というのは、普段「単調」に話す私たち日本人にとっては、表現しにくいものです。

もし、この独特のリズムがわからなかったり、子どもに読み聞かせをしたりするのに自信がないという場合は、外国人に実際に読んでもらうと良いと思います。英語圏の人々や、英語教育に熱心な国で育った人々は正確な発音やリズムの取り方を知っていると思います。

もし、外国人が周りにいないという場合は「子ども向けオンライン英会話」を活用するといいと思います。

「子ども向けオンライン英会話」というのは、インターネットで受ける英語の格安レッスンです。

フィリピンやその他、世界の先生たちと英会話が楽しめるというもので、大体25分で1レッスンのところが多く、ワンレッスン数百円というところもあります。その運営会社にもよるのかもしれませんが、自分のレッスンは自分で組み立てて、好きなことを学ぶことができます。

だから「マザーグース(ナーサリーライム)の読み聞かせをしてほしい」とか、「マザーグース(ナーサリーライム)を一緒に歌ってほしい」などというお願いもできます。

その機会を利用して、苦手意識の高い親でも、英語圏の外国人が自然と身につける「マザーグース(ナーサリーライム)」を経験させてあげることができるのです。

ぜひこれを機会に、お家でも子どもと一緒に楽しくマザーグースやナーサリーライムを始めてみませんか?

英語絵本・日本語絵本の魅力~わたしが子どもに読み聞かせをしてもいいの?~

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「わたしは英語が話せないし、どちらかというと嫌いだし…でも、子どもには英語を話せるようになってほしい。」と思っている人はたくさんいます。そして、そういう人ほど、子どもに英会話教室などで習った英語を、家で話すように強制してしまいます。

ここで立ち戻ってほしいのは、「何のために子どもを英語教室に通わせているか」という本来の目的です。

今この時に「I like animals. I like cats.」といえるようになることでしょうか?

いいえ違うはずです。大人になってからビジネスの場で、国際的な場で人々と意見を交わせるようになってほしいからではないでしょうか?英語を通して、広い世界を体感してほしいと願うからではないでしょうか?

言語というものはじっくり時間をかけて伸び続けるものです。今、子どもの英語の発音がどうとか、単語が言えるかどうかとか、英語を覚えているとかいないとかいったことを気にしすぎると、英語を学ぶ本来の目的を失ってしまいます。

それよりも、まずは英語の土台をしっかりと作ることが大事です。植物に例えると、根をはり、太い幹を作ってあげることに匹敵します。そうしておけば、あとからいくらでも葉を茂らせ、実をならせることができるのです。

そこで英語の土台を作るのに大活躍するのが、「本・絵本の読み聞かせ」です。英語で読み聞かせすることは、楽しい経験として英語の土台を作ることができるため、非常におすすめです。

わたしは、将来、立派な葉が茂り、大きな実が成るような「土台=基本」が大切だと思っています。そして、その太い幹を作る有効な手段の一つが「本・絵本の読み聞かせ」です。

ここでは、「本・絵本の読み聞かせの魅力」と「本・絵本の活用法」についてお話ししたいと思います。

本・絵本の読み聞かせの魅力

わたしたちは、学生のころ英語はあくまでも受験の科目のひとつとして学んできました。そもそも、会話をするためのものとして学んできませんでした。

「単語」「文法」「英文和訳」などを「暗記」したり「読解」したりする機会が多くありました。しかし、実際に英語を使ったコミュニケーション能力が身についたか、つまり、英語が自由に使いこなせるようになったかと聞かれれば、わたしは残念なことに、そうはなりませんでした。

だからこそ、せめて「自分の子どもには、自分と違って苦労せず英語を話せるようになってほしい!」と思います。

では、幼少期から子どもたちを週1、2回、英語教室に通わせることは、どのような意味があるのでしょうか。幼少期の英語教室は、英語に接する機会としては最高だと思います。子どもにいかに楽しく英語活動に取り組ませるかが大切なので、楽しく外国人の先生と遊ぶことは非常に良いことでしょう。

しかし、正直なところ、週1、2回英会話教室に通って楽しんだだけでは英語力をつけるのには足りません。大切なのは、毎日少しずつでも継続して英語に触れ続けることです。

そこで紹介したいのが、時間をかけず、お金をかけず、心を豊かにしながら「言語力」を付けられる「本・絵本の読み聞かせ」です。

実はわたし自身、「本や絵本は大切だ」という言葉は、耳にタコができるほど聞いてきました。この言葉は正直「うっとうしい」言葉でした。世間でも「本・絵本は大切」だと言われていて、「はいはい」という感じで、深く理由を考えませんでした。

しかし、今ではどっぷりと「読み聞かせ」の魅力にはまっています。

では、なぜ本、絵本の読み聞かせは、魅力的なのでしょうか?

その魅力をいくつか挙げていきたいと思います。

 コミュニケーション能力の基本である「聴く力」を育てる

まず、コミュニケーション能力の基本は「聴く力」が非常に重要です。聴く力がないと相手が何を言っているのかがわからないし、何を言っているかわからないということは、それに対してどう返答したらいいのかもわかりません。

本・絵本の素晴らしさは、読み手の口から発せられる言葉を聞きもらすまいと集中することです。「ワクワク」「面白い」「ちょっと怖い」「ドキドキする」といった子どもにとって興味深い世界が展開することなのです。

具体的に「聴く力」というのは、発音の微妙な違いを判別したり、一生懸命聞こうとする態度を備えると、相手の言うことを何とか聴きとろうとしたりする集中力を持ったりするということです。

また、本・絵本を読み聞かせることで、自然に言葉の意味や文字を習得することが可能で、さらに本を読もうとする意欲がわき、読む技術をそだてられるのです。

それでは、「どんな本・絵本がいいの?」といった本の種類について、「どんな方法?」といった読み聞かせをするときの注意点について、また「いつ読み聞かせをしたらいいの?」という時間や時期について、お話ししていきたいと思います。

どのような本・絵本を選んだらいいのでしょうか?

乳児の場合、読み聞かせをしてもらってもはじめはその「意味」を理解することができません。でも「声」はわかります。母親や父親などの声を聞くことでまず「安心感」「平穏」「安全」を得られます。そして、面白い話なのか、悲しい話なのか、少し怖い話なのか…などといった感情を声色で感じることができます。意味はわからなくても、感じる心をそだてることができるのです!

子どもが小さな頃は、文字そのものよりも絵に反応をするので、子どもが好きな色や絵、風合いの本・絵本を選ぶといいと思います。そして、まずは親自身が好きな本・絵本を選ぶことで、読み手としてより深く感情を伝えられることが重要です。

わたしが個人的に好きなのは、「はらぺこあおむし」などで有名なエリック・カール氏や「ミッフィー」で有名なディック・ブルーナ氏、また日本人だと「きんぎょがにげた」などで有名な五味太郎氏、「おへそのあな」などで有名な長谷川義史氏などです。ちなみに、五味太郎氏の絵本は英訳されています。

そして、フィクション、ノンフィクションという大きく分けて2つの種類がありますが、そのどちらでもいいと思います。

フィクションの特徴は、わたしたちの感情を代弁してくれ、発散してくれます。また、そこに書かれた物語は、自分自身の人生の物語への手がかりを与えてくれます。つまり、架空の人物に自らを置き換えることで、他人を認識してそれが自己の認識へとつがなるというものです。

ノンフィクションの特徴は、実録や事実に基づいたドキュメンタリーの作品です。実際にあった話なので、より現実的な世界を知ることができたり(フィクションにも言えることですが)、よりその人の立場に立った疑似体験ができるのです。

 どんな方法が良いのでしょうか?

一見矛盾しているように感じるかも知れませんが、本・絵本は日本語でも十分です。その理由は、日本語・英語の両方を読み比べることによって、その物語や本・絵本自体の興味を高められるからです。そして、言葉の土台は英語だけで作るものではありません。むしろ、まずはわたしたちの母語である日本語の土台をしっかり築けば築くほど、丈夫な幹、枝葉が生えるものです。あとからそこへ英語を浸透させても遅くはありません。

日本語の本・絵本であったとしても、関心のある話であれば自ら読もうとするのです。この好奇心を育てることで、自ら本を読もうとする自主性を育てることができます。

そして、興味を持ったものが英語で書いてあれば、英語を必要と感じ、自ら英語を習得しようとするでしょう。

子どもにとっては、たまたま興味のあるものが、英語で書いてあるというだけなのです。

しかし、ここで注意点ですが、英語や日本語の本を読んでいるとき、また、こどもに話しかけるときは、日本語と英語を混ぜることはしていけません。

例えば「meは今日、公園でrunしたよ。(わたしは今日、公園で走ったよ。)」

書いていてちょっと笑えてしまいましたが…

このように、日本語の一文の中に英語を混ぜたり、英語の一文の中に日本語を混ぜたりすることは、脳の言語力を司る場所に悪影響があります。英語脳を作るためには、日本語は日本語の把握できる場所と英語は英語の把握できる場所をしっかり分けることが必要なので、混ぜてしまうと大変危険です。

そして、もう一つ、子どもが読み聞かせをしているときに質問して来たらどうしたら良いのでしょうか?

質問してくれるということは、「聴いている」証拠です。読むのを中断してしっかりと質問に答えるということが大切です。しかし、質問がたくさんすぎて、文章が進まないときには、「まずは一回お話を最後まで読ませてね。」と先に告げます。切りのいいところで戻って質問に答え、もう一度その部分を読み直すとよいでしょう。

質問に答えるということは、子どもが文章の意味をしっかりとつかみ、物語の展開を終えるように手助けができます。あとで、必ず質問の答えを言ってあげましょう。

いつ読み聞かせしたらよいのでしょうか?

わが家は、夜寝る前に読み聞かせをしています。英語で言うと「Bedtime stories(ベッドタイムストーリー)」です。たまに学校から帰ってから読み聞かせをすることもありますが、帰宅時間がそれぞれ違うので、一番ゆったりとした時間を選んでいます。

他にも、起床時、朝食後、学校へ行く前、昼食後、昼寝時、入浴後、就寝時…いろいろな時間を見つけられると思います。その子によって読んでほしい「時」は違いますし、なるべく子どもが「読んでほしい」という時は、いつでも応えられるようにしています。

ちなみに、わが家の例ですと、夜寝る前に15分程度の読み聞かせをします。別に時間は何分でもいいのですが、わたし自身が「15分は確保する!」と自分に言い聞かせています。その時に読む本は、英語の絵本と日本語の絵本の両方を読みます。

順番は、「①英語の簡単で短い絵本→②ちょっと長めの英語絵本→③日本語の絵本か本」といったものです。

読み聞かせを始める時期については、「いつでもいい」と思います。子どもはいずれ自分で本を読み進めていくと思いますが、できれば中学生ぐらいまで、嫌がるまではずっと続けたいと思っています。まだ小さな子どもには絵本の「内容」や「意味」が分からなかったとしても、先ほど述べた「音」で感情を伝えています。意味でなくても、音で感情は伝えることができます。

そういう意味で「いつから始めてもいい」と同時に「いつまでも」読み聞かせようと思っています。

 親が英語教材をフル活用して読み聞かせをすることが、バイリンガルへの近道

本・絵本の読み聞かせがいい!ということをお伝えしてきました。本・絵本を使うことで、子どもたちはなによりも「楽しく」お話に聞き入ることで集中力も高まります。なによりも情緒を安定させ、自信を持って何事にも取り組む意欲や自主性を育てます。

でも、冒頭で話したように「わたしは英語が話せないし、どちらかというと嫌いだし…でも、子どもには英語を話せるようになってほしい。」と思っている人はたくさんいるということも事実です。

もし英語の自信がなければ、初めは日本語で読み聞かせをするのがいいと思います。先ほども述べたように、日本語の土台を作ることが大切で、そこに英語を浸透させていくということがいいと思います。そして次に、日本語・英語両方の本・絵本を用意してください。日本語で繰り返し読んだ後、英語でも読んでみると、イメージが出来上がっているので、どんな話の展開なのか、どんな場面なのか理解しながら読むことができます。

どうしても…という場合は、「CD付絵本」を活用するといいと思います。

CD付きの絵本の場合、まずはCDをかけ流して一緒に本・絵本を見るというものでいいです。でもその本・絵本を繰り返すうち、一緒に朗読できるようになります。そうするうちに自然な流れの中で、言語を習得することができるでしょう。

さらに、それでもやっぱり「外国人による「生」の声で読み聞かせをさせてあげたい!」とか「自分には読み聞かせする自信がない!」と思うのであれば、経済的で時間指定のできる「子ども向けオンライン英会話」を活用してみてください。

まずは是非、ご家庭で一日15分継続的に、絵本の読み聞かせをしてください。

なによりも「子どもと一緒に」わたしたちも本・絵本を楽しみましょう。

そして、身体に栄養を与えるのは「食事」ですが、心に栄養を与えるのは「本・絵本」なのです。

最後に、アメリカの元シカゴ教育長はこう言っています。

「もしも世の親たちが、わが子に1日に15分、本の読み聞かせをするようになれば、学校に革命を起こすことができるでしょう。」

小さな「読み聞かせ」という活動で、子どもたちを豊かな心を持ったバイリンガルに育てていきましょう。

英語習得のために必要なもの~自転車も、英語も幼少期に!~

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英語を一度学んだあとに使い続けるためには、長期にわたって記憶しておくことが重要です。この長期間の記憶のことを、専門用語で「長期記憶」といいます。

長期記憶の良い例が自転車です。自転車のように身体の様々な能力を使って体で覚えた技術は「長期記憶」として保存されます。長記憶の利点は、一度身についたら一生忘れないところです。

たとえしばらく自転車に乗っていなくても、幼少のころに何度も練習をして習得した技術は長期記憶に入っているため、勘を取り戻せばまたすぐに自転車に乗れるのです。この自転車の例のように、英語も一度学んだあとで長期記憶に保存されるようにするにはどうしたらよいのでしょうか?

子どもは自然に長期記憶を利用できる

どうして、自転車に一度乗れたら、一生乗りつづけられるのでしょうか?

それは、自転車に乗る技術というものを、身体を繰り返し動かして習得してきたからなのです。つまり、運動をしたり、何回も転んだりしながら繰り返し練習を行って習得した記憶は忘れないのです。これを、長期記憶の中でも特に「手続き記憶」といいます。

身体を繰り返し動かすことによって記憶された物事は、自動的に「手続き記憶」に入ります。子どもは特に体を動かします。このため、幼少期に習得したことは自然に手続き記憶となり、長期記憶として保存されるのです。

この幼少期の特性を、英語にもぜひ活用しましょう。そうすれば幼少のころに英語を習得した英語は、長期的に記憶しておくことができます。子どもは楽しいことは何度も何度も繰り返すことが苦痛ではありません。しかもわざわざ教えなくても、身体を使って体験してくれます。自然に身体を使って何度も繰り返す行為によって、英語の知識や技術を自然と長期記憶に入れることができるのです。

幼少期に英語を自然の流れの中で習慣化し、繰り返し学習することで、大人になっても英語を使って、コミュニケーションを図り続けることができるのです。これが、幼児期に英語を習得する最大のメリットなのです。

長期記憶へ記憶する

では、具体的に長期記憶に入れるためにはどうしたらようのでしょうか?

英語を書いて覚えたりしたり、暗唱したりするという単純な作業だけでは短期記憶にとどまり、すぐに忘れてしまいます。長期記憶に保存するためには、英語を自然と使えるような環境を作り出すことが大切です。

例えば、一般的な英語教室では、先生がりんごの絵カードを指さして、「What’s this?」ときいて、子どもたちは「This is an apple.(これはりんごです。)」と答えます。そして、その言い方を繰り返し練習します。はじめは、子どもたちも楽しいと感じると思いますが、徐々に飽きてきます。これは、単に繰り返し練習することによって英語の習得を図ろうとするものです。

もちろん、知識がないと英語を理解できないので、知識を得ることは必要です。しかし、それだけでは子どもは「覚えなければいけない」英語に飽きてしまいます。

そこで、長期的な記憶を活用するには、次のような例があります。

指導者は、本物のリンゴを手に持って、「Can you cut this apple like this?(りんごをこのように切れますか?)」というかけをすることから始めます。そして子どもたちは指示してその通りにりんごを切ったり、「How do you like this apple?(このりんごおいしい?)」とりんごを食べてどんな味がするのか自分の言葉で言ったりといった体験的な活動をすることがです。

これらの問いかけは「This is an apple.(これはりんごです。)」といった、りんごだけにフォーカスしていません。子どもたちは自然な思考や活動の流れの中で、「りんご」という単語以外にも、「切る」とか「この」といった単語も動作と共に把握できます。

そして、「あ~、切るってこういうんだ。」とか「おいしい、酸っぱい、甘いってこう表現するんだ。」という体験を、さらに人に「伝えたい」という気持ちになれば、他の単語や言い回しも、どんどん学ぼうとします。このようにして、リンゴを自分で切って食べるといった体験的な活動は、様々な効果があり、自分の経験として英語を習得できるのです。

英語を「習得」するということにフォーカスした知識的な学習も必要ですが、「使う」という体験にフォーカスした自然の流れの中で英語を習得していくという方法も必要なのです。そして「繰り返し」の体験が、長期記憶として脳の中に残り続け、英語を使い続けられる脳になっていくのです。

さらに、英語が話せると「楽しい!」「必要だ!」とか「習得したい!」という気持ちに子どもをさせられたら、もう言うことはありません!子どもたちは自主的に、英語の本を読んだり、調べたりして、英語を楽しく学んでいくことができるようになるのです。

英語を長期記憶に保存するための体験型学習方法

それでは、ここではいくつかの英語で行う体験型習得方法をご紹介します。

●ワークショップ型

期待できること:五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を生かして英語活動に取り組んで、英語の知識を得ると当時に、長期記憶に持ち込む。楽しく取り組むことで、自主的に英語学習ができるように育てる。

例:英語劇、英語で料理、英語で音楽(リトミックなど)、野外活動、英語でダンス、英語で実験、英語でものづくり、英語であそぶなど

●グループ学習

期待できること:グループで話し合いや、議論をすることで相手の言いたいことを理解して、英語の知識そのものはもちろん、自分の意見を伝えることで、「伝えたい」「英語が必要だ」という感覚を育てる。

例:プレゼンテーション、調べ学習、ミッション型スタンプラリー・クイズラリー、野外活動など

このようにして、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感をフルに生かした活動を英語学習に取り入れることで、英語を「長期記憶」に入れることができます。

幼少のうちにさまざまな体験にふれ、繰り返し活動することで自然な形で楽しく英語を「長期記憶」に入れることができます。そうすれば、自然に使える英語を、半永久的に身に付けることができるのです。小さいお子さんがいる方は、今から英語に取り組んでみましょう!

子どもをバイリンガルにさせるにはまず日本語の柱を育てよう!

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みなさんがもつ「帰国子女(英語圏)」に対するイメージはどんなものですか?

「英語も日本語もできていいなぁ。」

「海外に行ったらみんなバイリンガルになって帰って来るんでしょ?」

こんなイメージが多いかもしれません。

しかし、海外に行ったからと言って、全員がバイリンガルになって帰って来るとは限りません。バイリンガルとは「ちょっと」言語が話せる人というもではないのです。

そして、例えバイリンガルになったとしても、その英語力を維持し続ける必要があります。

そして、もし子どもを「バイリンガルに育てたい!」と思うなら、一番大切な言語は、母語である「日本語」です。母語である日本語は、あらゆる言語を学ぶ上で「柱」となるものなのです。

ここではバイリンガルについてお話ししたいと思います。でもその前に、バイリンガルという言葉の意味についてお伝えしたいと思います。

バイリンガルとは?

バイリンガルを辞書で調べると

「状況に応じて2つの言語を自由に使いこなす能力がある人。またその人。(三省堂「大辞林」より)」とあります。

状況というと、生活の場で2つの言語を使いこなすことができるのか、それともビジネスの場で2つの言語を使いこなすことができるのか…という違いがあります。

ここでは、状況の違いにこだわらず「なんなく2つの言語をこなせる」という立場に立ってお話ししたいと思います。

「子どもは柔軟な脳だから、言語に対する吸収も高くて、早く習得出来ていいなぁ」と多くの人が言います。確かにその通りで、わたしも自分の子どもの脳をうらやましく思います。しかし、ここには危険もひそんでいるのです。

バイリンガルという言葉のほかに「モノリンガル」、「セミリンガル」という言葉をきいたことがありますか?

「モノリンガル」というのは、「モノ=単一の」という意味があり、わたしたち日本人のように日本語は話せるが、外国語を習得していない人のことを言います。

そして、「セミリンガル」というさらに聞きなれない言葉があります。「セミ=やや、半分」という意味があって、実は「どっちつかずの中途半端な言語話者」を指すのです。また、「セミリンガル」は「ダブルリミテッド」という言葉でも表現されます。

そして、帰国子女だからと言って、英語と日本語がペラペラになるわけではありません。帰国子女ならではの悩みがセミリンガルです。実際にこのような実例があります。

  • ある、アメリカの現地校に通う小学5年生の日本人は、日本に帰国するため、日本語の勉強を始めました。しかし、小学校5年生にして、低学年の漢字が読めず、途中であきらめてしまった。
  • 親の仕事の都合で、カナダに住んでいる、ある小学校4年生の子は、年下の兄弟との幼児レベルの英語での会話しかできず、さらに日本語も幼児の本がやっと読める。英語、日本語ともどちらも筋の通ったことを話すことができない。

これは、帰国子女だからと言って英語と日本語がペラペラになるどころか、逆に英語も日本語もできないという自信喪失につながってしまうことを表しています。

さらには、中途半端な言語力は、将来、大人になってからの思考力にも影響が出ることが懸念されています。

 

バイリンガルになるのに必要なもの

では、一体バイリンガルになるのに必要なものは何なのでしょうか?

答えは、ズバリ「母語」を大切にすることです。つまり、「日本語」です。

日本語が形成されるのは0歳に始まって6歳ぐらいまでに「一次的ことば」が育ちます。「一次的ことば」は、自分がよく知っている比較的限られた親しい人との1対1での対話を通してコミュニケーションを深めていくものです。家庭での現実的な生活の場面に関することを話すようになります。

「一次的ことば」とは、現実的な身の回りの場面で、「対話」「絵本や本の読み聞かせ」「お話をしながら絵を描く」「粘土を作る」「ごっこ遊びをする」…といった経験からはぐくまれるものです。

それ以降は、「二次的ことば」が育ちます。これは小学校低学年ぐらいから育つことばです。この「二次的ことば」は、現実的な身の回りの場面から離れた、自分の頭で理解したことから話を展開するというように成長していきます。1対1ではなく、1対多の人々に自分の言いたいことを伝えていけるようになります。また同時に書き言葉も習得していく時期です。

英語を習得させたいと考えているのなら、まずは0歳から6歳までの日本語の「一次的ことば」「二次的ことば」をはぐくむことが何よりも大切です。

これは、子どもの言語の柱になります。柱の中でも最も重要な大黒柱になるのです。言い換えると、立派な大黒柱を建てなければ大きな家は建ちません。つまり、しっかりとした基礎がないと、言語はどっちつかずに終わってしまいます。

ここで重要なのが、0歳から6歳といった幼少期に、親が働きかけることです。しかし、今はやりの早期教育で「なんでも詰め込め!」と言っているわけではありません。親と一緒に日常的ないろいろな経験を通して、たくさん話しかけるというシンプルな体験の繰りかえしによって、言語の大黒柱は育っていくのだとわたしは考えます。

つまり、バイリンガル=英語教育なのではなく、まずは「英語を習得できるような土台をしっかりと築いていく」ということが大切なのです。

一次的ことばを育むには

先ほど海外で暮らす日本人の子どもの悩みの例をお伝えしました。

しかし、一方でそれを克服した家族もいます。

どのように克服したのかというと、「絵本や本の読み聞かせ」です。

わたしの友人はアメリカに20年以上も住んでいました。そして、アメリカで知り合った日本人男性と結婚し、3人の子どもに恵まれました。問題は「いずれ日本に帰国する」ということでした。

英語は基本的にアルファベットの26文字を覚えればアルファベットを組み合わせて、読み書き等の言語習得ができます。しかし、日本語には「ひらがな」「カタカナ」「漢字」という難関が待ち受けています。

外国人にとって、漢字は覚えられない・書けないというものだそうです。そのうえ日本語は、ひらがなやカタカナも覚えないといけません。これは、アメリカで育った日本人の子どもにとって非常に大きな壁になります。日本人の子どもだからと言って、日本語が習得できるとは限らないのです。

そこで、彼女は、「日本に帰っても子どもたちが困らないように。」といろいろと考え試しました。そして、出会ったのが「絵本」でした。

これは先ほどの「一次的ことば」をはぐくむのに効果的な方法としてご紹介しました。では「絵本」のどういうところがいいのでしょうか?

わたしは、はじめ「絵本」が効果的だと聞いたとき、正直なところ「そんなわけないでしょ。なんで絵本なんかが…(ごめんなさい)。」と思いました。しかし、いろいろと調べたり、聞いたりするうちに、「なるほど…。」と思い始め、我が家でもさっそく実行しています。

以下、絵本の魅力を表にまとめました。

絵本の魅力
絵がかいてあるから親しみやすい
リラックスして読める
物語の楽しさを感じられる
疑似体験ができる
聴く力が育つ
(振り返りすることで)伝える力が育つ
自然に言葉の意味や文字を習うことができる
知ろうとする意欲が育つ
質問ができるようになる

そして、実際に日本に帰って来てからは、難なく日本の学校に通っています。漢字もまわりの日本人に引けを取らない(むしろ優秀)ほどの日本語力を保ったまま帰国したのです。これは日本人がアメリカで自分の子どもに実行した話です。友人の子どもたちは、スピーチコンテストに出たり、外国人と積極的に接したり、まさに魅力的なバイリンガルに育っています。

そして、逆を考えてみてはいかがでしょうか?

日本に住む日本人が、子どもに「英語絵本の読み聞かせ」をして、英語力を豊かに高めていく。これほど魅力なバイリンガル教育はないのではないでしょうか?

 

バイリンガルへの近道

わたしたち日本人にとっての英語のあり方について考えなければならないと思います。

海外に住んだからと言って、外国の先生に英語を週一回だけ習ったからと言って英語が話せるわけではありません。それなのに、英語習得のみにフォーカスしてしまい、肝心の「思考力」「考察力」「想像力」「分析力」そして、「表現力」などの人が本来持っている力を軽視しているのではないのでしょうか?

わたしは、日本という環境の中で英語を習得するには、しっかりと日本語を使って身に付けていくことが重要だと考えます。そして、このことが真のバイリンガルへの近道だと思います。

真のバイリンガルを育てるには

言語を形成するのに大切な6歳ぐらいまでは、「すべて英語で子育てを!」というよりも、むしろ「英語を学んでいる」という感覚ではなく、「英語を楽しんでいる」という感覚が大切です。まずは「英語は楽しい遊び」という認識をさせる方がいいと思います。

それには、まずは日本語でしっかり対話すること、絵本の読み聞かせや、様々な体験を行うということが大切です。そのうえで、子どもに負担のない、英語による働きかけが有効です。

真のバイリンガルに育てたければ、英語よりも日本語を常に「一歩先」に位置付けるという考え方が大切です。

一方で、「英語と日本語の両方を学ばせるのは子どもに負担である」という考え方があります。わたしは「楽しい」感覚で、自然と英語に親しんでいけば負担にならないと思います。子どもは「楽しい」と感じるものは、「学習している」という意識は持たないからです。

これまでお伝えしたように、親の都合で海外に住んだからと言って、子ども全員がバイリンガルになって帰ってくるわけではありません。むしろ、英語・日本語のどっちつかずの言語能力しかつかないで悩んでいる親もいます。思考力、考察力、想像力、分析力などの認知能力も、言語能力が浅いと、掘り下げて考えることができないため、深い思考ができなくなってしまうのです。つまり、「セミリンガル」のような中途半端な言語能力は、大人になってからの思考力にも影響を与えてしまうのです。

日本語の言語能力を高め、「柱」をしっかり形成しさえすれば、あとから肉付けはいくらでもできるのです。

幼少のころは、「柱」である日本語を大切にしたうえで、さまざまな経験を親子で一緒にしていくということが大切です。あらゆる基本となる柱を育てながら、無理のない状態で、楽しく英語に触れられる環境を習慣づけられるというのが、真のバイリンガルを育てるのに効果的だと考えています。

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