2020年に学校英語教育の内容が変わります。特に小学校5・6年生の教科に英語が加わり、これまでの「外国語活動」から、「英語」として成績がつくようになります。時間数は、小学校5・6年生は週2回、年間70時間行われる予定です。
これまでの小学校5・6年生の「外国語活動」の内容的は、「英語の音に慣れ親しむこと」「コミュニケーションに対する意欲・関心・態度を育てること」などを目標にしています。
しかし教科としての「英語」となると、教科書を使い、「英語によるコミュニケーション能力の基礎を養う」ということが目的になります。
「英語を楽しむ」活動から、「英語のスキルを身につける」活動に代わっていきます。
ちなみに小学校3・4年生の場合は、一部の自治体や学校で外国語活動として独自に実施しているところもありますが、今後は週1回、年間35時間の「外国語活動」という必須授業になります。しかし成績はつきません。
内容としては、これまで小学校5・6年生が行ってきた「英語を楽しむ」活動を今度は小学校3・4年生がやっていくということです。
そして、この英語教育改革によって、小学校3年生から6年生までで600~700語程度の語彙習得を目標となってきます。
急に5・6年生の教科に英語が増えて、しかも成績まで付くといわれても、親として何をしてあげたらいいのかわかりません。というか、なにか先手を打っておいた方がいいのでしょうか?
子どもは順応する能力が高いですが、突然「今学期から英語が教科となり、成績が付きます!さあ、みなさん英語で話しましょう!」といわれたら、さすがに戸惑うと思います。
そして、同時に大学の入試試験「英語」の内容も変わってきます。それに準じて高等・中学校の授業内容も変わってきます。
コミュニケーションを重要視したいわゆる「使える」英語の時代がやってくるのだと思います。
この変化は、日本人が英語をコミュニケーションの場で使えるようになる、良い転換期だとは思うのですが、さすがに成績に関係してくるとなると気にはなります。
そこで重要なのは、英語にあらかじめ慣れておくということだと思います。2020年まであと1年ほどありますので、先手を打って子どもに英語に慣れ親しむ、そして楽しめる環境を整えてあげることが大切になってくると思います。
今回は、英語教育が強化される中、どのようにしたら子どもが英語を楽しみながら慣れ親しんでいけるのかということをお伝えしていきたいと思います。
変わる小学校英語教育
まず、先ほど触れた小学校英語教育の変化について表にまとめると以下のようになります。
小学校英語活動・教育 | 小学校3・4年生 | 小学校5・6年生 |
現状の英語教育 | 自治体や学校により独自の英語教育
・成績はつかない |
「外国語活動」
・成績はつかない ・週1回 ・主に学級担任が指導 内容:歌やゲームなどを通して英語に親しむ 目的:「聞く」「話す」などの技能習得、コミュニケーション能力を育てる |
2020年をめどにした英語教育 | 「外国語活動」
・成績はつかない ・週1回 内容:歌やゲームなどを通して英語に親しむ 目的:「聞く」「話す」などの技能習得、コミュニケーション能力を育てる |
教科としての「英語」
・成績がつく ・週2回 内容:検定教科書を使った授業 目的:「聞く」「話す」「読む」「書く」などの技能取得、実際にコミュニケーションで活用できる基礎的な技能習得をめざす |
では、具体的に「英語のスキルを身につける」活動とはどのようなものかといいますと、外国語活動で「聞く」「話す」ことを中心に学んできたのに対し、初歩的な「読む」「書く」も導入されます。
こう聞くと、「他の教科のように、覚えたり問題を解いたりすることが増えて、受験英語が前倒しされるのではないだろうか?」とか「内容が難しくなってしまうので、今までの楽しく活動していた英語へのイメージが変わってしまうのではないだろうか?」という声も聞こえてきます。そして、「成績」にとらわれてしまいがちです。きっと、子どもよりも親の方が「成績」に対して敏感になるのではないでしょうか?
変わる大学入試
さらには、大学の入試試験も変わります。それに合わせるかのように、中学校や高校での授業の内容も変わってきます。中学校では、「オールイングリッシュ」つまり授業をすべて英語で行うという方針があります。これも、「英語のスキルを身につける」という意図があり、生徒が自発的に英語を使う環境づくりをする目的があります。
また、大学入試は、これまで読んだり、聞いたりという解答方式の内容が中心だったのが、「話す」技能もはかる内容も加わり、英語の「聞く・書く・話す・読む」という4技能を偏りなくテストするということになります。そして、大学入試で英語の能力を図るため、民間の検定試験(TOEIC、英検、GTECなど)を利用して、4技能を図ることも検討されています。これはそれぞれの大学によって、2023年度までに、現行の「マークシート試験」か「民間の検定試験」のどちらかまたは両方を活用するというものです。
つまり、まとめると、2020年をめどに、小学校英語教育だけでなく、中学校英語教育・高校英語教育・大学入試が変わります。
しかし、日本の英語教育において、成績がつくようになるとか、入試試験が変わるという現実がありますが、変わらない事実があります。
それは、「英語」はあくまでも日本語と同じような一つの「言語」であり、「人と人とのコミュニケーションを図る道具」であるということです。
英語という道具は人と差をつけるためにあるのではなく、「英語を学ぶことでどのような世界が広がるのか」ということを子どもたちに意識させたいものです。
たとえば、これまで発展途上国の人々はその国の中でしか職業を得ることができませんでした。しかしインターネットの普及もあり、英語ができさえすれば世界中を相手にビジネスをすることができるようになったのです。下手をすると、英語ができるということだけで、英語を母国語とするもしくは、英語教育に熱心な発展途上国の人の方が、日本人よりもビジネスチャンスがあるといえます。
日本はまだまだ英語後進国です。その日本の英語教育の「成績」や「大学入試」にとらわれるのではなく、もっと広い視野で子どもを「真の国際人」にすることが大切なのです。
そういうものに振り回されることなく、真の英語スキルを身につけられるといいですよね。
真の英語スキルを身につけさせるためには?
では、どうしたら「英語」をスムーズに習得させることができるのでしょうか?今後も予想される英語教育の改定にどのように対応していったらよいのでしょうか?
英語は「好き」「嫌い」がはっきり分かれる教科の1つであるといえます。その証拠に中学校、高校、大学と10年間ぐらい英語を学んできた(学ばされた)けど、外国人を目の前にすると、全く話せないという人が多くいます。日本人は、諸外国の人々に比べると「恥ずかしがりや」で「消極的」であるといわれます。その日本人特有の気質も加わってか、英語というだけで、毛嫌いしたり苦手意識を持つ人が多くいます。
以下の表は、英語が得意か苦手かどうかというアンケートです。
「あなたは英語が得意ですか?苦手ですか?」
出典:ベネッセコーポレーション教育総合研究所「中高生の英語学習に対する実態調査」2014年
また以下は、英語が「苦手」「やや苦手」という生徒に対して、いつから苦手意識を持つようになったのか、アンケートを取ったものです。
出典:ベネッセコーポレーション教育総合研究所「中高生の英語学習に対する実態調査」2014年
このアンケートによる「英語が苦手」というのは、あくまでも「教科としての英語が苦手」ということではないでしょうか?冒頭にも述べましたが、英語はあくまでもコミュニケーション手段の一つということが重要です。
英語の成績が良くなるというのは、英語が好きになることと比例しています。
これを解消するためには、恥ずかしさや失敗をもろともしない幼少期から英語の環境に身を置き、英語を使う機会に多く触れるということが大切です。もちろん個人差はありますが、言語習得の臨界期を迎える10歳前後より以前にそういう環境を整えてあげる必要があります。もしろん臨界期を迎えたあとでも、若ければ若いほど効果があると思います。
小学校までに楽しく英語に触れて育ってきた子は、中学校になってからの英語への取り組みに積極的です。小学校までに英語環境で育ってきた子は、中学校英語へスムーズに移行できるのです。
では、具体的に「聞く・書く・話す・読む」の4技能それぞれにおいて、各家庭での環境づくりを初級・中級のお子さんを中心にアドバイスさせていただきたいと思います。
「聞く」 | 初級・中級:タッチペン(「G-Talk」や「G-Speak」)を活用して、絵本や本を繰り返し聞いたり、まねしたりして遊ぶ。CD・DVD・動画・NHKの教育番組などを観たり聞いたりする。 |
「書く」 |
初級:・100均でも買えるアルファベットを練習するノート、アルファベットカードや単語カードの文字や絵をノートに写す ・「A to Z for Very Young ESL Learners」シリーズなど見やすく、大きな文字で書けるテキストを活用する 中級:「100words KIDS NEED TO READ」シリーズなど、ゲーム感覚で単語や文章を繰り返し練習できる本を用意する |
「話す」 |
初級:子ども向けオンライン英会話、英会話教室を活用して、英語の楽しさに触れる 中級:・子ども向けオンライン英会話のプログラムを活用し、英検対策や、企業独自の英語検定にチャレンジする ・サマーキャンプなど、英語を使う実践の場に参加する |
「読む」 |
初級から中級:・「CTP」「オックスフォードリーディングツリー」など、手に取りやすいものから入り、読み聞かせをしたり、簡単なものは一緒に読んだりする ・英語の絵カードを並べてかるた取りをする ・英語の「アルファベット」「数字や日にち・曜日」などのポスターをトイレや部屋、リビングなどに貼る(ポスターはラミネートすると持ちがよい) 中級:「ペンギンブックス」シリーズなどのレベル分けされた本を活用する |
4技能をそれぞれ伸ばす方法はまだまだたくさんあります。
これらの活動を毎日地道に繰り返して、習慣づけることが大切です。親としてできることは、慌てず「英語って楽しい!」「もっと英語を使ってみたい!」などという意欲を育てるということです。英語に取り組むときは、「ちょっと間違えた」からといって決して否定することはしないでください。
そういう毎日の習慣が、英語好きな子になり、英語で成績が取れる子になると思います。
子どもを英語環境に置いてあげて、いつでも、どんな時でも褒めて伸ばしてあげてください。
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