子どもをバイリンガルにさせるにはまず日本語の柱を育てよう!

子どもをバイリンガルにさせるにはまず日本語の柱を育てよう!

8c2a999b6377160a595058e3e1085ec7_s

みなさんがもつ「帰国子女(英語圏)」に対するイメージはどんなものですか?

「英語も日本語もできていいなぁ。」

「海外に行ったらみんなバイリンガルになって帰って来るんでしょ?」

こんなイメージが多いかもしれません。

しかし、海外に行ったからと言って、全員がバイリンガルになって帰って来るとは限りません。バイリンガルとは「ちょっと」言語が話せる人というもではないのです。

そして、例えバイリンガルになったとしても、その英語力を維持し続ける必要があります。

そして、もし子どもを「バイリンガルに育てたい!」と思うなら、一番大切な言語は、母語である「日本語」です。母語である日本語は、あらゆる言語を学ぶ上で「柱」となるものなのです。

ここではバイリンガルについてお話ししたいと思います。でもその前に、バイリンガルという言葉の意味についてお伝えしたいと思います。

目次

バイリンガルとは?

バイリンガルを辞書で調べると

「状況に応じて2つの言語を自由に使いこなす能力がある人。またその人。(三省堂「大辞林」より)」とあります。

状況というと、生活の場で2つの言語を使いこなすことができるのか、それともビジネスの場で2つの言語を使いこなすことができるのか…という違いがあります。

ここでは、状況の違いにこだわらず「なんなく2つの言語をこなせる」という立場に立ってお話ししたいと思います。

「子どもは柔軟な脳だから、言語に対する吸収も高くて、早く習得出来ていいなぁ」と多くの人が言います。確かにその通りで、わたしも自分の子どもの脳をうらやましく思います。しかし、ここには危険もひそんでいるのです。

バイリンガルという言葉のほかに「モノリンガル」、「セミリンガル」という言葉をきいたことがありますか?

「モノリンガル」というのは、「モノ=単一の」という意味があり、わたしたち日本人のように日本語は話せるが、外国語を習得していない人のことを言います。

そして、「セミリンガル」というさらに聞きなれない言葉があります。「セミ=やや、半分」という意味があって、実は「どっちつかずの中途半端な言語話者」を指すのです。また、「セミリンガル」は「ダブルリミテッド」という言葉でも表現されます。

そして、帰国子女だからと言って、英語と日本語がペラペラになるわけではありません。帰国子女ならではの悩みがセミリンガルです。実際にこのような実例があります。

  • ある、アメリカの現地校に通う小学5年生の日本人は、日本に帰国するため、日本語の勉強を始めました。しかし、小学校5年生にして、低学年の漢字が読めず、途中であきらめてしまった。
  • 親の仕事の都合で、カナダに住んでいる、ある小学校4年生の子は、年下の兄弟との幼児レベルの英語での会話しかできず、さらに日本語も幼児の本がやっと読める。英語、日本語ともどちらも筋の通ったことを話すことができない。

これは、帰国子女だからと言って英語と日本語がペラペラになるどころか、逆に英語も日本語もできないという自信喪失につながってしまうことを表しています。

さらには、中途半端な言語力は、将来、大人になってからの思考力にも影響が出ることが懸念されています。

 

バイリンガルになるのに必要なもの

では、一体バイリンガルになるのに必要なものは何なのでしょうか?

答えは、ズバリ「母語」を大切にすることです。つまり、「日本語」です。

日本語が形成されるのは0歳に始まって6歳ぐらいまでに「一次的ことば」が育ちます。「一次的ことば」は、自分がよく知っている比較的限られた親しい人との1対1での対話を通してコミュニケーションを深めていくものです。家庭での現実的な生活の場面に関することを話すようになります。

「一次的ことば」とは、現実的な身の回りの場面で、「対話」「絵本や本の読み聞かせ」「お話をしながら絵を描く」「粘土を作る」「ごっこ遊びをする」…といった経験からはぐくまれるものです。

それ以降は、「二次的ことば」が育ちます。これは小学校低学年ぐらいから育つことばです。この「二次的ことば」は、現実的な身の回りの場面から離れた、自分の頭で理解したことから話を展開するというように成長していきます。1対1ではなく、1対多の人々に自分の言いたいことを伝えていけるようになります。また同時に書き言葉も習得していく時期です。

英語を習得させたいと考えているのなら、まずは0歳から6歳までの日本語の「一次的ことば」「二次的ことば」をはぐくむことが何よりも大切です。

これは、子どもの言語の柱になります。柱の中でも最も重要な大黒柱になるのです。言い換えると、立派な大黒柱を建てなければ大きな家は建ちません。つまり、しっかりとした基礎がないと、言語はどっちつかずに終わってしまいます。

ここで重要なのが、0歳から6歳といった幼少期に、親が働きかけることです。しかし、今はやりの早期教育で「なんでも詰め込め!」と言っているわけではありません。親と一緒に日常的ないろいろな経験を通して、たくさん話しかけるというシンプルな体験の繰りかえしによって、言語の大黒柱は育っていくのだとわたしは考えます。

つまり、バイリンガル=英語教育なのではなく、まずは「英語を習得できるような土台をしっかりと築いていく」ということが大切なのです。

一次的ことばを育むには

先ほど海外で暮らす日本人の子どもの悩みの例をお伝えしました。

しかし、一方でそれを克服した家族もいます。

どのように克服したのかというと、「絵本や本の読み聞かせ」です。

わたしの友人はアメリカに20年以上も住んでいました。そして、アメリカで知り合った日本人男性と結婚し、3人の子どもに恵まれました。問題は「いずれ日本に帰国する」ということでした。

英語は基本的にアルファベットの26文字を覚えればアルファベットを組み合わせて、読み書き等の言語習得ができます。しかし、日本語には「ひらがな」「カタカナ」「漢字」という難関が待ち受けています。

外国人にとって、漢字は覚えられない・書けないというものだそうです。そのうえ日本語は、ひらがなやカタカナも覚えないといけません。これは、アメリカで育った日本人の子どもにとって非常に大きな壁になります。日本人の子どもだからと言って、日本語が習得できるとは限らないのです。

そこで、彼女は、「日本に帰っても子どもたちが困らないように。」といろいろと考え試しました。そして、出会ったのが「絵本」でした。

これは先ほどの「一次的ことば」をはぐくむのに効果的な方法としてご紹介しました。では「絵本」のどういうところがいいのでしょうか?

わたしは、はじめ「絵本」が効果的だと聞いたとき、正直なところ「そんなわけないでしょ。なんで絵本なんかが…(ごめんなさい)。」と思いました。しかし、いろいろと調べたり、聞いたりするうちに、「なるほど…。」と思い始め、我が家でもさっそく実行しています。

以下、絵本の魅力を表にまとめました。

絵本の魅力
絵がかいてあるから親しみやすい
リラックスして読める
物語の楽しさを感じられる
疑似体験ができる
聴く力が育つ
(振り返りすることで)伝える力が育つ
自然に言葉の意味や文字を習うことができる
知ろうとする意欲が育つ
質問ができるようになる

そして、実際に日本に帰って来てからは、難なく日本の学校に通っています。漢字もまわりの日本人に引けを取らない(むしろ優秀)ほどの日本語力を保ったまま帰国したのです。これは日本人がアメリカで自分の子どもに実行した話です。友人の子どもたちは、スピーチコンテストに出たり、外国人と積極的に接したり、まさに魅力的なバイリンガルに育っています。

そして、逆を考えてみてはいかがでしょうか?

日本に住む日本人が、子どもに「英語絵本の読み聞かせ」をして、英語力を豊かに高めていく。これほど魅力なバイリンガル教育はないのではないでしょうか?

 

バイリンガルへの近道

わたしたち日本人にとっての英語のあり方について考えなければならないと思います。

海外に住んだからと言って、外国の先生に英語を週一回だけ習ったからと言って英語が話せるわけではありません。それなのに、英語習得のみにフォーカスしてしまい、肝心の「思考力」「考察力」「想像力」「分析力」そして、「表現力」などの人が本来持っている力を軽視しているのではないのでしょうか?

わたしは、日本という環境の中で英語を習得するには、しっかりと日本語を使って身に付けていくことが重要だと考えます。そして、このことが真のバイリンガルへの近道だと思います。

真のバイリンガルを育てるには

言語を形成するのに大切な6歳ぐらいまでは、「すべて英語で子育てを!」というよりも、むしろ「英語を学んでいる」という感覚ではなく、「英語を楽しんでいる」という感覚が大切です。まずは「英語は楽しい遊び」という認識をさせる方がいいと思います。

それには、まずは日本語でしっかり対話すること、絵本の読み聞かせや、様々な体験を行うということが大切です。そのうえで、子どもに負担のない、英語による働きかけが有効です。

真のバイリンガルに育てたければ、英語よりも日本語を常に「一歩先」に位置付けるという考え方が大切です。

一方で、「英語と日本語の両方を学ばせるのは子どもに負担である」という考え方があります。わたしは「楽しい」感覚で、自然と英語に親しんでいけば負担にならないと思います。子どもは「楽しい」と感じるものは、「学習している」という意識は持たないからです。

これまでお伝えしたように、親の都合で海外に住んだからと言って、子ども全員がバイリンガルになって帰ってくるわけではありません。むしろ、英語・日本語のどっちつかずの言語能力しかつかないで悩んでいる親もいます。思考力、考察力、想像力、分析力などの認知能力も、言語能力が浅いと、掘り下げて考えることができないため、深い思考ができなくなってしまうのです。つまり、「セミリンガル」のような中途半端な言語能力は、大人になってからの思考力にも影響を与えてしまうのです。

日本語の言語能力を高め、「柱」をしっかり形成しさえすれば、あとから肉付けはいくらでもできるのです。

幼少のころは、「柱」である日本語を大切にしたうえで、さまざまな経験を親子で一緒にしていくということが大切です。あらゆる基本となる柱を育てながら、無理のない状態で、楽しく英語に触れられる環境を習慣づけられるというのが、真のバイリンガルを育てるのに効果的だと考えています。

Follow me!

著者について

河内咲子 administrator

PAGE TOP