「自分の子どもには、ネイティブが話すようなキレイな発音の英語を話せるようになってもらいたい。」と思いませんか?
突然ですが、このインド人の話す英語を聞いてどう思いますか?
次はフィリピン人の話す英語です。
「なにいっているのかわからない!」「何語なんだろう…」「強烈な英語だな~」などと思ったのではないでしょうか。
インド英語の音声は、どうやらインドの女優さんがインタビューに答えています。こちらが、その英文です。
…It’s one of the recent one that I did, and it’s called luck by chance. It’s going down as one of the really funny things that I’ve done. That’s really good, really good.
フィリピン英語の音声は、男性がなまりのある英語でもみんな話そうよ!と語りかけています。こちらが、その英文です。
…Important thing is that we know understand each other. That’s why when be nice get together we talk in our own way and share stories.
インド人にしても、フィリピン人にしても、「なまり」がひどいですよね。
標準語・共通語とは異なる発音のことを特に「なまり」といいますが、英語では「accent:アクセント」といいます。
今聞いていただいたのは、「インドなまり」のある英語、「フィリピンなまり」のある英語だと言えます。
語弊があるといけないので、補足しますが、インド人やフィリピン人がすべてこのような、なまりのある英語で話すわけではありません。今回はわかりやすくするために、特になまりの強い人の音声を載せました。
このように、なまりがある英語はいわゆる「かっこいい英語」とはとてもかけ離れているように聞こえます。(失礼!)
ん?ちょっとまってよ…
インド英語、フィリピン英語のなまりのある発音を紹介しましたが、私たち日本人の英語ってどうなんでしょう?
実は、私たちの話す英語にもなまりが存在します。
日本人の話す英語は、
Janglish(ジャングリッシュ)
Japanglish(ジャパングリッシュ)
と言われています。
これは造語で、「日本人独特の発音がある英語」とか「和製英語」という意味で使われます。
つまり、日本人特有の発音があるという意味でもあり、日本人がオリジナルで作り出した英文や英単語などがあるという意味でもあります。
一方、子どもに英語教育を受けさせるときに、英語の発音にこだわって口を出してしまう親がいます。(私もその親の一人ですが…)
そのような親は、ネイティブのようなキレイな英語が「本物」の英語だと思いがちです。熱心である親ほど、「ネイティブが話すようようなキレイな発音でないといけない」と思ってしまうのです。
さらに、日本の英語教育の現場でも発音にとてもこだわる先生もいます。果たして、発音ってそんなに気にしないといけないものなのでしょうか?
もちろん、自分の言いたいことを相手にとって聞き取りやすい発音で伝えることは、大切なことです。
しかし、熱心な親や先生はきれいな発音の英語にフォーカスしすぎて、「話す内容」ではなく、「話す発音」について子どもにアレコレ助言してしまう傾向があります。そうなると、子どもは英語を話すことが楽しくなくなってしまい、英語を話そうという気力がなくなってしまいます。
大切なのは「音」ではなく、話の「内容」ということを忘れてはいけません。
目次
世界中にある英語のなまり
世界には、なんと15億人もの英語を使う人々がいます。
そのなかには、アメリカ系、ヨーロッパ系、オセアニア系、アジア系、アフリカ系など様々な国や人種の人々がいます。
アジア系の国々や地域では、インドだけではなく、フィリピン、シンガポール、マレーシア、香港など、母国語の発音に影響を受けたなまりのある英語が飛び交います。
例えば、フィリピンについてはスペイン統治時代があったため、スペイン語の影響を強く受けてできたタガログ語が、英語の発音にも影響を与えているようです。
わたしはカナダに住んでいたことがあります。カナダには、様々な国からの移民が住んでいます。そこで感じたことなのですが、発音がはっきりいってヒドイ人(すみません)でも、きちんとコミュニケーションがとれています。
話す内容を聞いてみると「なまり」がひどいだけで、ちゃんと「英語」を話しています。話している内容は、とても高度です。本当にただ、「なまりがあって発音が悪いだけ」なのです。そこでわたしは「自分の言いたいことが明確であれば、発音や少々の文法の間違いなど関係ない」と感じました。
一方、カナダで通訳翻訳の学校に通ったとき、その学校で教えている日本人の先生が「発音は命」というようなことを言っていました。「なるほど…確かに、せっかく伝えたいことがあっても発音がキレイでなければ、もったいない気がするな。」とわたしはそのときに思いました。
当たり前のことですが、「自分の言いたいことをきれいな発音で伝える」というのが一番の理想です。
しかし、どちらも大切なのだけれども、わたしの意見は「発音が悪くても、自分の伝えたいことをまず伝える」ことが大切なのではないかと思います。
先ほどのインド人の英語も立派な英語です。たとえなまりがあったとしても、アメリカ、カナダ、イギリスなどの国に行けば、きちんと自分の話したいことが相手に伝わります。日常的にも、仕事でも問題なくコミュニケーションが取れます。
実は、イギリス英語の中にも標準英語があります。その標準英語を話している人は、ほんの一握りなのです。「生粋の標準英語」を話している人はごく限られた人たちだけなのです。
つまり、英語の本場イギリスの国内にも「なまり」が存在するのです。逆になまりのないイギリス英語である「伝統的な標準英語(Received Pronunciation:リシーブドプロナンシエイション)」を話している人は、わずか数パーセントしかいないことがわかっています。イギリスでは階級や地域によって発音が違います。自分が標準英語を話さないことに対して、いちいち気にしているのでしょうか?
またアメリカでも同じです。「一般アメリカ英語(General American:ジェネラルアメリカン)」といって標準英語を話す人はごく限られた少数派なのです。
英語の標準語を話している人は、世界的に見てもごく限られた少数の人々で、逆になまりのある英語を話している人のほうが圧倒的に多いということなのです。
例を挙げると、世界と比較すると規模に大きな違いがありますが、日本語で言う「東京出身者が話す生粋の東京弁」といったところでしょうか。
このように、世界にはいろいろな国でいろいろな形の英語が話されています。そして今回は、発音にこだわりすぎず、あるがままの自分をあるがままの言葉で伝えることの大切さについてお伝えしたいと思います。
英語を話す人は世界総人口の約30%
英語は、約58か国と約21地域で公用語とされています。その数、およそ3.5億人と言われています。公用語とは、数か国語が使われている正式な国語として認められている言語のことを言います。
しかし、公用語でないにしても、地球全体で日常的に15億人もの人が英語で話したり使ったりしています。そして、私たち日本人のように日常的には英語を使わないけど、英語を外国語として学んでいるという人を合わせると、なんと18億人ともいわれています。
出典:ウィキペディア
では、英語を公用語として用いていている主な国をご紹介します。
アメリカ系の地域:アメリカ、カナダ、グレナダ、ジャマイカ、バハマ、セントルシア、ガイアナなど
ヨーロッパ系の地域:イギリス、アイルランド、マルタ、EU欧州連合(国ではないが英語も公用語のひとつ)など
オセアニア系の地域:オーストラリア、ニュージーランド、キリバス、サモア、ツバル、バヌアツ、パプアニューギニア、パラオ、フィジーなど
アジア系の地域:インド、フィリピン、シンガポール、パキスタン、スリランカなど
アフリカ系:ウガンダ、ガーナ、カメルーン、ガンビア、ケニア、ザンビア、ジンバブエ、タンザニア、ナイジェリア、ボツワナ、南アフリカ共和国、スーダン、ルアンダ、レソトなど
とてもすべて書ききれませんが、「え?こんな国も?」という国もあります。
アメリカ系、ヨーロッパ系にもたくさんの英語圏がありますが、アフリカ系、オセアニア系で英語を話す地域もたくさんあります。わたしたちが普段あまり耳にしないような、なじみのない国や地域でも英語が公用語として話されています。
世界のさまざまな国や地域で、自国の言語(母国語)の影響を受けたなまりのある英語が話されていることが想像できます。なまりのある英語を話す人々の中に、日本人も入っているのです。
「かっこよさ」ではなく「中身の濃さ」
わたしは子どもに「まずは英語の発音を気にするのではなく、何を伝えたいのかということが大切なんだよ」と話しています。
なぜなら、せっかく英語を学んでいるのに、発音を気にするあまり、自分の伝えたいことが伝えられないということほど寂しいものはありません。
「こんな発音だから話ができない…」「言い方を間違えたらどうしよう…」なんて思っているならもったいないですよね。
発音は意識をすれば、あとからいくらでも修正ができます。
まずは、どんなことを相手に伝えたいのか、話す内容に着目して「スッキリ伝えられた~!」と思えるようになってから、少しずつ発音のトレーニングなどを行って、修正していったらいいと思います。
フィリピン人の中には、こんなことを言っている人もいます。
「確かにアメリカではきれいな発音で英語を話すと賢く思われるかもしれません。でもフィリピンの特有の『フィリピンなまりの英語』を話すことは心地いいものです。」
このように、自国の言葉の影響を受けた「なまり英語」に誇りを持つ人もいます。
もしかしたら、お子さんの中には、発音を意識するあまり、うまく話せない、話したくないという子もいるでしょう。そういう時は、冒頭でお聞きいただいた音声のように、いろいろな国のいろいろな英語をどんどん聞かせてみましょう。
いろいろな発音を聞くことで、多様性を意識することができ、自分の話す英語に対しても「コレも個性のひとつなんだ」「なまり英語でもオッケーなんだ」と意識できるようになると思います。
まずは「かっこよく聞こえる英語であるか」というよりも、「自分が伝えたいことはなにか」ということに視点を置いて、子どもに自信を持たせられるような助言をしいきましょう。
これから先、いろいろな国の人と接する機会が増えて、いろいろな発音の英語に出会うと思います。子どものころからいろいろな「なまり」のある英語を聞くことは、文化の多様性を知ったり受け入れたりするきっかけになります。
「言葉」は生活と密接に結びついています。学校や英会話教室、家庭で学んだだけでは習得されるものではありません。日常生活や仕事で言いたいことを積極的に伝えることで定着していくものです。
ですから、わたし自身、子どもの話す英語の「音」、つまり発音や間違いよりも、「どんなことを相手に伝えたいのか」ということの大切さを話していきたいと思っています。
実はそれが英語習得の一番の近道なのです。
最後に、こんな言葉があります。
English belongs to those who use it (not to America nor to Britain)
意味は、「英語というのは、アメリカやイギリスのものではなく、英語を話そうとする人のものである。」
つまり、英語というのは「だれもが気軽に使える言葉=万国共通語」なのですよ!
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