みなさんは、お子さんに英語絵本の読み聞かせをしていますか?絵本はいろいろな気持ちを感じ取ったり、知識を身に付けたり、また疑似体験をさせたり、視野を広めたりするのに役立ちます。
しかし、「読んであげたいけれど、なんて書いてあるのかわからない。」
「英語は苦手だから、間違った発音になってしまうのではないか。」などといった心配の声も少なくはありません。
ちょっとその前に、これを読んでみてください。
「あ、い、う、え、お。か、き、く、け、こ。さ、し、す、せ、そ…」
ごめんなさい。馬鹿にしているわけではありません。
では次です。声に出して読んでみてください。
「A、B、C、D、E、F、G…」
これまた、馬鹿にしているわけではありませんが、
「エィ、ビー、スィー、ディー、イー、エフ、ジー…」
と読みますよね。大抵の大人ならわかりますし、英語に触れたことのある子どもならわかると思います。
でも、実はアルファベットにはもう一つの読み方があります。
「A、B、C、D、E、F、G…」
「ェア、バ、ク(ス)、デュ、エ、フ、ガ…」
これはいかがでしょうか?
これは意外と、知られていないかもしれません。この読み方は、「フォニックス」といいます。
大変重要ですが、わたしたち大人は学校教育で学んできていません。
ところが、このフォニックスというのは、子どもはもちろん、英語の絵本を子どもに読み聞かせてあげたい大人も、身に付けるべきものなのです!
アルファベットの2つの「顔」
実は、アルファベットには2つの「顔」があります。
前者の「エィ、ビー、スィー、ディー、イー、エフ、ジー…」といった「名前読み」と
後者の「ェア、バ、ク(ス)、デュ、エ、フ、ガ…」の「音読み」です。
この「ェア、バ、ク(ス)、デュ、エ、フ、ガ…」という「音読み」を「フォニックス」と言います。
フォニックスというのは、「読み書き」を身に付けるうえで、「文字と音を結び付け」て、単語をどのように「読んだら」いいのかという時に大切になってきます。フォニックスというのは、発音のためでもありますが、何といっても文章を読むためにあります。
このような奇妙な「音読み=フォニックス」ですが、これが実はすごいのです!
このフォニックスを利用して、単語をどう読むかが身につけば、なんと英語の絵本や本が読めるようになるのです。
英語圏の小学校前の幼稚園などでは、この「フォニックス」を使った教育が行われています。
わたしの滞在したカナダの小学校(カナダでは日本の年長に当たる子どもたちも、「キンダー」という小学校のクラスで学んでいる)でも、このフォニックスを使った授業が行われています。日本の学校教育ではなじみのないフォニックスですが、英語圏の学校の先生たちは、英語の読みを教えるのにこのフォニックスを当然のように使います。
ところが、私たち日本人には、英単語を読むのにすこし厄介なものがあります。
それは、「ローマ字」です。
わたしたちは小学生中学年の時に、ローマ字を習います。
このローマ字で習った「A」=「ア」、「I」=「イ」、「U」=「ウ」といった音は、「英単語」を読むのに、すこし邪魔になってしまいます。
例えば、「Mike(人物名)」を「ミケ」と読んでしまったり、「maze(迷路)」を「マゼ」と読んだりしてしまいます。
でも実際には、「Mike(人物名)」は「マイク」、「maze(迷路)」は「メイズ」というのが正しい読み方です。
しかし、このフォニックスを身に付ければ、そんな心配はいりません。
このように、同じアルファベットには、2つの「名前読み」と「音読み」という顔があり、その読み方もずいぶんと違うものがあることがわかります。
英文で書いてある看板や表示、絵本・本などを読めるようになるためには、フォニックスを習得する必要があります。しかし、英語そのものになじみがない子がいきなりフォニックスを学ぶと混乱してしまうことがあります。
そのため、まずはアルファベットそのものに慣れるため、「名前読み」である「エィ、ビー、スィー、ディー、イー、エフ、ジー…」をきちんと理解させたうえで、「音読み」である「ェア、バ、ク(ス)、デュ、エ、フ、ガ…」というフォニックスの音に慣れ親しんでいくという順番が大切です。
どのようにしてフォニックスを使う?
では次に、英語圏の子どもたちはこのフォニックスを使ってどのように単語の「読み」を習得していくのか説明します。
「apple:りんご」は、
「a(エイ)、p(ピー)、p(ピー)、l(エル)、e(イー)」と覚えるわけではありません。
そこで、このフォニックスが活躍します。
「a(ェア)、pp(プ)、l(ル)、e(前に母音があるときは後ろの母音は発音しない)」この音を最初はひとつずつ読みます。慣れてきたら徐々につなげるように読んでください。
具体的には、以下のように練習します。
- 「エァ」「エァ」「エァ」。「プル」「プル」「プル」。
- 「エァ」「プル」
- apple「エァプル」
「map:地図」は、日本語で言う「マップ」ではありません。
「m(ム)、a(ェア)、p(プ)」
- 「ム」「ム」「ム」。「エァ」「エァ」「エァ」。「プ」「プ」「プ」
- 「ム」「ェア」「プ」
- map「ムエァプ」
このようにして、一つ一つの音を組み合わせることによって「読み方」を学んでいきます。そして、これを何度も何度も繰り返しながら、また絵本や絵カードを組み合わせながら、英語圏の子どもたちは英単語や英文が読めるようになるのです。
日本語は難しい、英語は簡単!
日本語は「最も難しい言語のひとつ」と言われています。なぜなら、読んだり書いたりするためだけでも多数の文字を覚えなくてはならないからです。
ざっと数えてみると、「ひらがな(48文字)」「カタカナ(48文字)」「漢字(小学校常用漢字だけでも1000字以上)」を巧みに組み合わせています。
そのうえ、話したり聞いたりするためには、特殊な言い回しによって、意味合いが変わってくる文章もあります。
さらに日本語には、一つの単語に対して「尊敬語、謙譲語、丁寧語」といった敬語があります。同じ「(あるものを)見る」でも「ご覧になる(尊敬語)」「拝見する(謙譲語)」「見ます(丁寧語)」となって、相手が見るのか自分が見るのかという違いが言い回しによって変わってくるのです。
一方、英語は、はっきり言って日本語よりも簡単です。そもそも、アルファベットの数は26文字だけから成っているからです。
確かに、英語には「見る」という単語に対しては、「視覚的に見る」=「see」、「見ようとして見る」=「look」、「じっとあるものを見る」=「watch」といった意味合いの違いはあります。しかし英語は、日本語のように、「(あるものを)見る」という1つの単語に対して、3つ立場に立った言い回しがあるわけではありません。
とはいえ、英語は簡単とはいっても、1つだけ厄介なものがあります。それが「エァ、バ、ク(ス)、ドゥ、エ、フ、ガ…」という読み方をする「フォニックス」です。
日本語は「あ」は「あ」としか読みません。この1つの音さえ覚えれば、例えどんな難しい漢字でもふりがなさえあれば小学生でも読めます。
しかし、アルファベットを使った単語の場合、「a」は「エイ」というのではなく「ェア」と読みます。また、「oo」と母音が重なった場合「オー」ではなく「ウー」と読みます。(他にも、母音が重なった音や、子音が重なった音、子音と母音が組み合わさった音などがありますが、このページではとりあげません)
このように、アルファベットの「エイ」「ビー」「スィー」といった「名前読み」のほかに、発音のための違った「音読み」が存在するのです。そして中には、アルファベット同士の組み合わせによって、読み方つまり「音」が変わってくるものもあります。
英語圏の子どもたちは、普段から家庭でアルファベットの「名前読み」に触れているので、このフォニックスも自然に習得することができます。
では実際にどのようにフォニックスを読むのか以下の表で確認してみましょう。
アルファベット | 名前 | 音 | 音出しのポイント |
A | エィ | エァ | エとアの間の音 |
B | ビー | ブ | 口を閉じてから強く |
C | スィー | クッ | 口の奥の方から |
D | ディー | ドゥ | 強く音を出し、ゥは短めに |
E | イー | エ | 口を横に引きエと強く |
F | エフ | フ | 下唇を軽くかみながら息を出す |
G | ジー | グ | 口の奥の方から |
H | エィチ | フ | 息を短く吐く |
I | アイ | イ | 口を横に開く |
J | ジェイ | ジュ | 口を丸め強めに短く |
K | ケイ | ク | 口の奥の方から |
L | エル | ル | 舌を上の歯ぐきにあてながら |
M | エム | ン(ㇺ) | 口を閉じたまま「ム」 |
N | エヌ | ン(ヌ) | 舌を上の歯ぐきにあてながら |
O | オゥ | ア | 口を大きく開いて |
P | ピー | プ | 息だけ吐き出すようにして |
Q | キュウ | クゥ | 口の奥の方から |
R | アール | ゥル | 口をとがらせながら |
S | エス | ス | 上下の歯を軽く合わせながら |
T | ティー | トゥ | 上の前歯の裏に舌をつけて一気に出す |
U | ユー | アッ | 口をあまり開けずに喉の奥から小さく |
V | ヴィー | ヴ | 上の歯を下唇に軽く当てて(振動させる) |
W | ダブリュー | ウッ | 胸から |
X | エックス | クス | 歯を軽く閉じて |
Y | ワイ | ィヤ | 力を入れて |
Z | ズィー | ズ | 上下の歯を軽く合わせながら |
日本の子どもたちも、英語圏の子どもたちのように順序立ててフォニックスを習得する必要があります。
まずアルファベットの「名前読み(エィ、ビー、スィー、ディー、イー、エフ、ジー…)」から触れていきましょう。なぜなら、アルファベットを全く知らない状態でフォニックスの音読みの習得は難しいからです。
まずは、アルファベットとは何なのかを知る「名前読み」に親しんだ後、アルファベットの「音読み」であるフォニックスに触れていくと良いです。
フォニックスを習得しよう!
これまでただ「聞く」のが主流だった子どもも、「フォニックス」を知ることによって、日常の英語で表記されている物が、看板などの掲示物が、また、何といっても英語の本が読めるようになります。この、「読める」ということを知った時の子どもは、目の前に新しい道が開かれたようにパッと明るい表情になります。
なにも、これは英語だけのことではありません。思い出してください、小学1年生の時に習う「ひらがな」だけでも、わたしたちは家や町中にあるものが何と書いてあるのかわかったときは、ずいぶん視野が広がった経験をしてきました。
これと同じ経験を、英語の世界でも体感できるのです。
何といっても、これまではただの飾り感覚で「見る」だけの英単語や英文だったのが、このフォニックスを習得することによって、「読む」英単語や英文へと変わっていきます。
また、「読める」単語は、「書ける」ようになります。これは、英語を習得するうえで大きな基礎力となります。
読むことによって、自主的なインプット活動ができるようになるのです。
今回は紹介したフォニックスは、実はごく一部です。ここで紹介した以外にも多くのフォニックスがあります。アルファベット26文字に関係したほんの少しのものをご紹介しました。たとえアルファベット26文字とはいえ、母音、子音、子音と母音の組み合わせなど、結構奥が深いのがフォニックスです。
しかし、必ず身に付けたい基礎の部分なので、必ず習得しましょう。とはいえ、子どもにどのようにして具体的に教えたらいいのかわらない場合が多いと思います。そういう時は、やはり、幼少期にフォニックスを習ってきた、ネイティブや、第二言語として英語を習ってきた国々の人たちに習うのが一番の近道です。
もし、近所にフォニックスについて教えてくれる外国人がいたら、ぜひ習いたいものです。
また、外国人が講師の英会話教室の場合、フォニックスを教えるコースがあるかどうか、また、フォニックスを教えられる講師がいるかどうか確認するのがいいとおもいます。
しかし、一番手っ取り早いのは、子ども向けオンライン英会話を利用することです。個人指導なので、子ども向けオンライン英会話の講師に、「フォニックス」を教えられる講師を一覧から探したり、事務局に直接聞いたり、また、講師にフォニックスを教えてほしいと直接希望を出すといいと思います。
子ども向けオンライン英会話は、こういった融通が利くというのが優れている点です。しかも、通学型の英会話教室に比べて価格もかなり安く、自分の時間や曜日にあった日を選択でき、細かい要望もお願いすることができます。
ぜひ、こういった制度を利用して、読み書きの基本であるフォニックスを習得し、「聞く」英語から、「読み書き」ができる英語にステップアップしていきましょう。
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